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by kazuo_okawa
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ノワールをまとう女

第65回 江戸川乱歩賞 受賞作たる神護かずみ氏の『ノワールをまとう女』を読む。

裏の帯文句は
「新ヒロイン登場!
自宅は大久保の雑居ビル。冷蔵庫にはビールと栄養ゼリー。
日課はトレーニング。音楽はオールディーズ。話し相手はAIのユキエ。
仕事は、企業のトラブル請負人。服は黒尽くめ――。」とあるように
なかなか興味深い舞台設定である。

新人登竜門たる賞には数々あるが、乱歩賞は大抵の場合、当たりはずれはないと思っている。
今回も面白く読めた。

【以下、少しトリックに触れています】

基本的ストーリーは、主人公が依頼された仕事を引き受ける中で、謎と事件に出くわす。
そして、本格ミステリの定番ともいえる、錯綜するストーリーとある人物が同一人物というトリック。
そして登場人物の出自に関する謎…。

こう書けばわかる通り、主人公が男性であれば、かつて読んだ本格ハードボイルドのようである。

それがある種の安心感をもって読めるのかもしれない。

市民団体のリーダーがハンドルネームで呼ばれていることから、多分、ある人物なんだろうな、とある種の「お決まり」で進んでいくのも心地よい。

しかも、帯文句の通り、舞台設定は極めて新しい。

乱歩賞作品は、読み終えたあと選考委員の選評を読むのが楽しみであるが、
京極夏彦氏の評する「古い器に新しい食材を盛る手つきは堂に入っており、一種のピカレスクロマンとして読める」
という評に全面的に共感する。

お勧めである。

【追記】
とこう書いたが、趣向を新しくしていながら昔からのトリックとなれば、<新しい器に古くからなじんだ食材を盛る>とも言えるのではないだろうか…。
.


by kazuo_okawa | 2019-09-22 18:42 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
乱歩賞作品は一般に大きなはずれはなく、どれもまあまあ読ませる上、時には大変面白い作品もある。
しかも、毎年、夏休みに刊行されるので、ミステリファンとしてはこの時期楽しみの一つである。

第61回乱歩賞は「道徳の時間」。
早速購入して読了した。
しかし、ブログに挙げるにはやや逡巡したのだが…。

【以下、少しだけ「道徳の時間」のネタバレをしていますのでご注意下さい】

過去の事件と現在の事件が交錯するというのはミステリの手法の一つで、本作もその手法である。
謎が幾つも設定され、ドキュメンタリー映画の撮影という手法をとり関係者にインタビューを重ねながら「真相に迫る」というのが目新しくて面白い。
主役伏見が、映画観の違いなどで越智とぶつかり合って、カメラ撮影の仕事を辞めると何度も引き上げかけるのもストーリー展開上工夫されている。
また越智の正体というサプライズエンディングも良い。
こういうのは好きである。

しかし何より引っ掛かるのは、過去の事件の犯人の動機である。
この動機を最大の謎としてあれだけ引っ張ってきたのですからね。

この著を読んで思い出すのが、実在の神戸の事件。
少年Aが出版した「絶歌」について、その出版の是非の議論を呼んだことはつい最近の話である。
「道徳の時間」はまあこの「絶歌」を例に取ってみれば、最初からそのベストセラーを目指して殺人を犯したというもので、どこから考えても現実性がない。

…とまあ、こんなことを思うのは、私が、法律実務家だからかも知れないが。

もう一つ、思い出すのが、東京オリンピックのエンブレム問題である。
佐野研二郎氏の盗作疑惑から、彼が辞退することになったが、この間判明したのは、選ばれたのは当初の佐野氏の公募作品でなかったことだ。
修正した作品が問題になったエンブレムだったわけであるが、公募作品を「修正」させるというのはおかしいのではないかとの疑惑である。

本書も修正させたとある。
大きく修正させたなら、果たしてそれは問題ないのか。
おもわず、東京オリンピックのエンブレム問題を思い起こさせる。

本の帯には大きく「問題。一番悪い人は、誰でしょう?」とある。

答えは、「出版社である」と言いたくなる…。
.
by kazuo_okawa | 2015-09-02 22:57 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
昨年の乱歩賞作家下村敦史氏のプロ第2作「叛徒」を読む。
新人2作目とは思えないうまさである。
何よりも昨年の乱歩賞作品の発行から半年で発売されたことに驚く。
そして、そのミステリとしての完成度も高い。

(以下、ネタバレしています)

私が思うには、著者はミステリの手法に通じている。

その一つは「評価の反転」である。
ミステリの醍醐味を何処に求めるかはファンそれぞれであろうが、私は基本的に「発端の謎、中段のサスペンス、結末の意外性」というそれこそ大昔から言われる(その表現に手垢がついているが)ところが好きである。
そして、読者の意表をつく意外性が良い。
その意外性の手法に読者が思っている「評価を裏切る」のが、私は好きである。

一番典型なのは、「善人」と思われていた人物が、「真犯人」だというものであるが、そういう典型例でなくとも、
「ぼんくら」と見えるが「優秀」、
「悪の側」と見せかけて実は「善の側」など、
「叛徒」はその読者への「評価の反転」が実にうまい。

もう一つは「ストーリーの交錯」である。
典型例は、「過去のストーリ」と「現在のストーリ」や、「現実の事件」と「家族の問題」などであるが、無論、色々なパターンがある。
一番面白いのは、主ストーリとして「現在の事件」が進行し、従ストーリとして「過去の事件」があるが、それが実は重なっていずれもがサプライズエンディングとなるというものである。
3つ以上のストーリーの交錯もあるが「読者の負担」の大きいのは、エンターテインメント小説としてふさわしくない。
「叛徒」は本の帯にあるように、1度目は「正義」のために義父を裏切り(これが過去のエピソード)、2度目は息子のために「警察組織」を裏切る(これが現在進行の事件)、という「裏切り」のテーマが重なる。
私としては「1度目」が「2度目」に影響する(アガサクリスティ風に言えば「過去は未来に影を落とす」ですね)という「因果」をもっと強める方が良いと思うが、まあこの辺は好みでしょうね。

さてメインテーマの通訳捜査官の「誤訳」。
かつて、「民間通訳」が「取調官」に知られずに、被疑者に対して「絶対に喋るな」と脅した事案があった(いつ、どこの事件だったか調べる時間が無いのでここは記憶で書いている)。
だからこその「警察通訳」のはずであるが、その問題点にとりくんでいるところが興味深い。

そしてラスト。
心地よいエンディングである。

乱歩賞受賞作「闇に香る嘘」の感想にも書いたが、期待しうる作家である。
「叛徒」お薦めしたい。
by kazuo_okawa | 2015-01-25 15:15 | ミステリ | Trackback | Comments(0)