私の趣味やニュースの感想など好きなことを発信するブログです


by kazuo_okawa
羽生が、棋王戦挑戦者決定トーナメントで永瀬に敗れたとき、私はブログで
「羽生とすればこれ以上、名人戦で森内に負けられないと思っているに違いない。そして、羽生はこの名人戦の前に、渡辺2冠王との王将戦という大一番を控えている。
羽生は、そこでも、この永瀬戦と同様、後手番矢倉を採用するのではないだろうか。」と
書いた。

さてこの王将戦七番勝負。
予想取り、挑戦者羽生は第一局に後手番矢倉を採用し、渡辺明王将の前に敗れた。
羽生は敗れた後に「負けた将棋だが、もう一回持ってみたかった。」と感想を述べている。

一般的には不利と言われる後手番矢倉を、(森内の採用もあり)おそらく羽生自身は不利とは考えていないのであろう。
羽生の一連の書物を読んでいても、一般に不利と言われていても、羽生は自身が納得するまで指し続ける、という。
そうであれば、自己が納得いくため、「矢倉」を実践で試すつもりなのであろう。

先のブログにも書いたが、私は、羽生が森内との名人戦を見据えて、矢倉を追求しているように思える。
その思いは、王将戦第一局を終えた今も変わらない。
言うまでもなく、森内は、王道である矢倉戦の第一人者であり、
羽生が第一人者の座を奪還するには、矢倉戦は避けて通れないし、また、避けて通る羽生ではない。

強豪渡辺明2冠との、この王将戦が今後どうなるか。
戦形も含めて、大変興味深い。
# by kazuo_okawa | 2014-01-13 22:14 | 将棋 | Trackback | Comments(0)
新年の新聞各紙を読んで知ったのは、
日中間(自衛隊、中国軍)で様々な協議が行われており
現在、問題となっている「防空識別圏」についても
以前より協議されていたと言うことである(毎日新聞元旦記事)。
日中衝突を避けるための自衛隊と中国軍の「連絡メカニズム」は
防衛省ホームページにも結果概要は掲載されているが詳細は不明である。

無論、交渉事であるから、これまで詳しくは公表されなかったのであろうが
各紙、新聞記者は無論知っていると思われる。

そしてその「連絡メカニズム」交渉が、少なくとも、安倍首相の靖国参拝により、
途絶えたことも事実のようである。

その意味では、靖国参拝の評価はきちんとしなければ成らない。
より「戦争」に近づく行為をしているのは誰なのか。
一体、誰が特をしたのか、損をするのか…。
そして何よりも「民意」を反映してるのかどうか。

途絶えてしまった「連絡メカニズム」の構築をどうするか。
こういった「交渉」は、今後どうなるのか分からないが
いずれにせよこういう重要な「交渉」は全て、検証に耐えられるべきであろう。

そこで想起されるのが特定秘密保護法である。

こういった交渉関連事項を全て特定秘密とされれば何ら検証し得ない。
「秘密」の開示は、それが役立つ時期の開示でないと意味がない。
60年後に開示されても、何の役にも立たない。

しかも何よりも、こういう交渉が特定秘密とされれば
今後は、こういった事実の取材・報道すら、なしえないおそれがある。
しかし、今後、こういう取材・報道がなされないと、
国民の知る権利、民主主義にとって大変な問題であることが分かる。

無論、特定秘密保護法は、他にも問題の多いことは繰り返し述べてきた。

改めてこの法律は廃止しなければならない。

私達、大阪弁護士会は引き続き頑張ります。
そして新年初の(この件で通算三度目の)デモを
国会開会日に合わせて行います。

以下の通りですので、奮ってご参加下さい。

【案内】

特定秘密保護法の廃止を求めるデモ行進への参加のお願い

特定秘密保護法は、多数の国民が法案に反対、あるいは、慎重審議を求める
声を挙げる中、十分な審議がなされないまま、昨年12月6日午後11時すぎ、
与党と一部野党が採決を強行し、特定秘密保護法は成立してしまいました。
当会は憲法上の知る権利を侵害し、国民主権の基盤を害する法律をこのまま
放置することはできません。
今後とも弛むことなく特定秘密保護法の施行に反対し、同法の廃止を求める
運動を継続したいと考えます。その一環として、このような当会の強い意思を
アピールするため、通常国会の開会日である2014年(平成26年)1月2
4日(金)正午から第3回目のデモ行進を下記要領で企画しました。
特定秘密保護法の施行は許さない・廃止を求める強い意思を継続してアピー
ルする重要な機会です。是非多数の市民の皆さまのご参加をお願いします。

日 時 平成26年1月24日(金)12時~13時(11時30分集合)

コース 大阪弁護士会館ロビー集合、会館西側車止めから出発、会館南側道路へ
天満警察署前交差点を北東へ西天満3 交差点を経て 西天満交差点を西へ
梅新東交差点を南へ梅新南・大江橋北詰・南詰・淀屋橋北詰を経て
中之島公園市役所南側路上(ゴール・解散)

集 合 大阪弁護士会館1階ロビー(所在地:大阪市北区西天満1丁目12-5)

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# by kazuo_okawa | 2014-01-13 01:06 | 司法・ニュースその他 | Trackback | Comments(0)
日本将棋連盟会長で十七世名人の資格を持つ谷川浩司九段が順位戦のA級からB級1組へ降級することが1月11日未明に決まった、という。
 今朝の朝日新聞一面を見てしばし残念な思いに駆られた。

 今期、陥落の最有力候補であったが、現実に陥落を目の当たりにすると実に寂しい。
 残り2戦を残して陥落が決まるというのも残念だが、逆に言えば、あきらめのつく見事な「陥落ぶり」とも言えよう。

 谷川浩司の魅力は、なんと言っても、(「番外戦」など一切行わないのは無論のこと)「一手差」で無難に勝つなどの戦術はとらず、美しく、最短距離で勝つところにある。
 「光速の寄せ」と言われる所以である。

 1977年頃から、私は弁護士を目指して司法試験の勉強を始め、勉学第一の生活を始めたが、谷川浩司の将棋は大変気になった。
 私は、78年に初めて司法試験を受けて短答試験不合格、79年には短答試験に合格するも論文試験に不合格、そして80年に3回目で短答・論文・面接の全てをクリアして司法試験に合格し、その後、2年間の修習生活を送ることになる。
 言わば、一段、一段階段を上がる感じであったが、合わせるように(と言っても、実際はこちらが「一ファン」として谷川浩司に注目していただけなのだが)谷川浩司は78年から82年へとかけて、毎年、C2,C1,B2,B1そしてA級と疾風のごとく駆け上がっていった。ファンとしては頼もしく心躍らせたものである。
 同時にそれは、同時期に法曹を目指す身にどれだけ励みになったことか。

 スポーツであれ何であれ、人々は、ひいきのスターに自らを重ね合わせ、応援するとともに、それを自らの励みにすることは少なくないだろう。
 私の場合、法曹を目指して進んでいく時期と重なったこともあり、間違いなく「頭脳格闘技」(将棋)の若きスター谷川はその一人だったのである。

 80年は、私が司法試験に合格した年であるが、谷川浩司はB2。かの有名な、芹沢九段との一局が行われた年でもある。
 82年は、私は修習2年目で、谷川浩司はA級になっていた。
 この年、中原誠対加藤一二三の歴史に残る名人戦10番勝負が行われ加藤が奪取した。
 私は、関西将棋会館の解説会でその歴史的場面を見た。

 続く83年は、私は新人弁護士一年目。
 A級谷川浩司は前年度当然のように挑戦権をつかんで、名人加藤一二三に挑み、この83年、「あたかも目の前のミカンを手につかむように」(芹沢九段の言葉)名人位を奪取した。
 このときも、私は、関西将棋会館にいた。
 解説は、「だるま流」森安秀光九段。私は、「谷川新名人」が決まった瞬間、大盤をにらんだまま、しばらく声を発することが出来なかった森安の様子が今なお目に焼きついている。

 以後、谷川は名人も併せてA級に32期連続で在籍したのである。
 見事としか言いようがない棋界のビッグスターである。
 その彼が、今回は、自己の対局でないところで、しかも未明の時間に陥落が決まったという。
 これでこのまま終わるのでは、ビッグスターに似つかわしくない。
 今は、会長職に忙しい谷川であるが、落ち着いたとき、きっとA級に戻って来るに違いない。
 それが、楽しみである。



【追補】

朝日の1月11日付け夕刊にも谷川陥落の記事が出ており、
文中、「ちょっと早いけど僕の自叙伝です」(毎日新聞社)が引用されていた。
そこで書棚から同書を探してぱらぱらと読み直したところ
先のブログの「勘違い」に気付いた。

谷川が、芹沢九段と一局交えたのは、谷川が七段のとき、
つまり「鬼の住み家」と言われたB1のときで、一年ずれていた。
どうやら、谷川がB2で初めて対戦した中原一六世名人の時と混同していたようである。

ちなみに芹沢九段の書物も書棚から引き出して数冊パラぱらっと再読した。

酒好きの芹沢が、三日前から酒を断ち、全ての仕事をキャンセルして、
対谷川戦にのぞみ、元天才芹沢は見事に谷川を負かすのである。

負けた谷川は前著「自叙伝」でその対局を振り返り
「そのときの芹沢先生は、さすがに強かった」
「芹沢先生との対局は、それが最後になった。一戦して一敗。忘れられない対局である」と記している。

一方、芹沢は勝ったものの、谷川を絶賛している。
芹沢が谷川を絶賛している文章は幾つもあるが、例えば「どんと失敗、どんと成功」では
たった一局であるが、一番だけでもさせたことに
「将棋指しになってよかった」と述べている。

尚、前述ブログの芹沢の引用部分も正確には以下の通りであるので修正する。
芹沢は、中原以上に才能のある米長、内藤が未だ名人になれない、その思いを綴った後
谷川は「目の前にある好きな果物を手に取るように、いとも易く名人位を獲ってしまったのである」と
記している(「王より飛車が好き」(サンケイ出版)より)。
(1月12日追記)
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# by kazuo_okawa | 2014-01-11 23:40 | 将棋 | Trackback | Comments(0)

「労働法」の最終講義

本日は、私が講義に赴いている大阪府立大学経済学部における「労働法」の最終講義であった。

一年間の締め括りゆえ若干の思いを込めて終える。
とはいえ、正確には、あと一回、試験の為に出講するのだが。

若い人を相手に話をするのは結構楽しく
現在、龍谷大学と合わせて2校に講座をもたせて頂いている。

つい先日、学者の刑事立法研究会に呼ばれて
私が関わった最近の判例を報告するという機会があった。
その報告の後、若い学者が近寄ってくれて名刺交換をした。
その彼は、関東の大学に勤める研究者なのであるが
「龍谷大学で、大川先生の講義を聞きました」と聞かされ
驚くと共に大変嬉しく思ったものである。

私の講義を聞いて頂いた方が成功され、そして、思わぬ形で
受講生だったと明かされるのは、大変心地よい驚きである。

龍谷大学の場合は法学部であるため、その卒業生と
司法界で出会う可能性は少なからずある。

しかし、大阪府立大学では講義の対象者は経済学部生であり、
司法関係に来られる方は、おそらくほとんどないであろう。

それゆえに、大阪府立大学経済学部の卒業生の方と
思いもかけぬ意外な場所で出会ったときに
「講義を聞きました」と言って頂けると、嬉しい。

「労働法が役に立ちました」と言って頂けると、もっと嬉しい。

【2015年8月7日追記】
留年生がいたため、引き続き府大で労働法の講義をしている。
とはいえ、実際に、今年度で終了する。
尚、本文記載の通り教え子から挨拶を受けるのは嬉しいものだが、昨日(2015年8月6日)ある集まりで、とある司法修習生(68期)が「龍谷大学法学部出身です。学生時代、先生の講義を聞きました」と挨拶に来てくれたのも嬉しいものでした。
# by kazuo_okawa | 2014-01-10 20:57 | 大学あれこれ | Trackback | Comments(0)
今期A級順位戦で、谷川が渡辺に負けた。
渡辺5勝2敗、谷川1勝6敗である。

谷川の降級の可能性が一段と高まった。

渡辺は、かつて、谷川の棋譜を並べて勉強したそうだが
この二人には共通項がある。
二人とも、「中学生棋士」である。
中学生で将棋のプロ棋士になったのは
他には、加藤一二三九段と羽生善治3冠のわずか4人のみであり
まさしく「天才中の天才」である。

そして、この4人中、谷川と渡辺にはいわゆる同世代のライバルがいない。

羽生などは、森内竜王・名人をはじめとする「羽生世代」のライバルだらけであり
特に、羽生・森内が、小学生時代から約30年の時を経た今日でも
ライバル同士というのは驚異的ですらある。

ライバルの存在は互いに力を高め合い、
ある意味では大変心強い「戦友」であるとも言えよう。

ところが、谷川と渡辺には際だった同世代のライバルがいない。
谷川などは、「序盤のエジソン」田中寅彦九段がライバルと期待されたが
結局は長続きしなかった。

その谷川は、29歳の4冠王をピークにして、その第一人者の座を
羽生に譲り渡している。

渡辺は、今年30歳になる。
渡辺が、谷川同様に、29歳の3冠王の時が一番ピークだった、となりかねない。
無論、そのようなことがあってはならない。

ただ谷川の場合、地位を追いやった強敵は、下の世代(羽生世代)であったが
渡辺の場合は、森内名人に「竜王」を奪取された通り、相手は
上の世代(ここも羽生世代)であることだ。

1月12日から始まる渡辺対羽生の王将戦。

七大タイトルの中で王将戦は、歴史的には意義のあるタイトルであるが
現在では、主催社、賞金額などから、もっとも存在感の薄いタイトルである。
しかし、今期の渡辺対羽生の王将戦は別である。

渡辺は上の世代にこれ以上負けるわけにはいかないだろう。
一方、羽生は来たるべき「名人戦」へつなげるためにも負けられない。

この一局は、将来の将棋界に影響する実に大きな一局である。

この対局、どうなるのか。
実に楽しみである。
# by kazuo_okawa | 2014-01-09 23:40 | 将棋 | Trackback | Comments(0)
「殺意の構図 探偵の依頼人」を読む。
作者の深木章子は元弁護士であり、
弁護士を廃業して作家に専念し書かれたミステリである。

ミステリとしては三転四転する作品である。
「どんでん返し」ミステリの好きな方には大変面白い作品であろう。
また作者は弁護士経験があるため、司法実務など
非常にリアルでその点も興味深い。

しかし、私自身が弁護士であるためか、些細な点ではあるが
どうしても気になる部分がある。
そこでこのブログでは、ミステリとしての作品の評価は別として
私が弁護士であることから気になった部分について触れる。

<以下、ネタバレしています>

それは、「接見交通権」に関することと、最後の事件の動機である。
とりわけ「接見交通権」に関する部分は、実は、読みながら
妙に気になっていた部分である。

接見交通権とは、憲法上認められた人権であり
平たく言えば、勾留されている被疑者・被告人が
立会人無しに、弁護人と会える権利である。
これが弁護人以外の者(例えば、家族)との面会なら、必ず、立会人がつく上
そもそも、面会自体が制限されることもある。
しかし、全ての人との面会が禁止されているときでも
被疑者・被告人は、資格を有する弁護人と立会い無くして会えるのである。
これは、被疑者・被告人の防御権を全うするために、専門家のアドバイスを
言わば「秘密」の状態で受けることを意味する。

以上を前提にして、私が気になった一つ目は、この弁護人接見を
当局が「20分」と制限する場面である。
物語の最初の方で出てくるので、これがいきなり引っ掛かる。

この制限は、作者が作中で詳しく解説しているとおり
いわゆる「接見指定」と呼ばれるもので
はっきり言って、「接見妨害」以外の何物でも無い。
20分では、とうてい、事情聴取、打ち合わせ、適切なアドバイスができないことは
誰しも想像がつくであろう。

私自身も、過去何回かこういう「接見指定」をうけたことはある。
こういう「接見指定」のあり方については、弁護士会あげて激しく問題にし
また数々の国家賠償請求訴訟などを起こして闘ってきた。

その経過は省くが、結論から言えば、裁判員裁判施行前の
2008年5月には、警察庁、最高検察庁が通達を出して、
接見の運用は大きく改善されたのである。

以降、最近では、検察庁特捜部事件などの特別な例外を除き
接見時間の制限という事例はほとんど報告されていない。

つまり、「殺意の構図 探偵の依頼人」に出てくる「接見時間20分」の運用は、
現時点では、よほどの例外の場合しかありえず、従って、本作のような運用が
されているのは、実は2008年5月以前のことなのである。

私は、ここを読んだとき、本作は、事件発生日時にトリックがあり
その伏線か、と思ったくらいである。
(無論よく考えれば、そんな専門的なことが伏線になるはずはないし
またそもそも作品を読み進んでいけば、裁判員裁判であることがわかり
つまり、運用改善後であることがわかるのである。
どうやら作者は2007年に弁護士を辞めておられるようなので
そのため最近の運用は経験しておられなかったものと思われる)

その点はさておき、私は、どうにもこの点が引っ掛かったのである。

しかしこの部分は、ミステリとしての作品に影響しない。
従って、ある意味では、どうでもいいことだとは言えるだろう。
しかし、元弁護士の作品ゆえ、読者が、現在もそうだと誤解される危険はある。

もう一つは、「朱実殺し」の真相に関係する。

ミステリの手法の一つに「間接正犯」トリックがある。
間接正犯とは,Aが,Bを利用して,Cを殺そうとするとき
Aは直接,Cに手を下してはおらず、
間接的であるため、このAを間接正犯と呼ぶ。
例を挙げれば,AがBに「この薬をCに飲ませてちょうだい」と頼み
Bが,Cに薬を飲ませたところ、実は、その薬は毒薬であったためCが死んだ、
というような例である。
Bは、全く「人形」として利用されただけであり、法的には責任は問われない。

ミステリの世界に話を戻せば、このBが意表を突く人物であればあるほど
Aが真犯人と見抜くのは難しく、そして、一方、謎解き場面の意外性は
一挙に増すのである。
(ここまで書けば、とある有名作家の名作を思い浮かべる方もいるだろう)

さて本作である。
実は本作では、そのBは、何と!主役級の弁護士なのである。
これは非常に面白い発想である。
おそらく多くの方の意表を突いたことであろう。

しかし、この点も、私が弁護士であるが故に
どうにも気になるのである。
前述の通り、接見交通権は、誰の立会いも無くして
弁護人と会える権利である。

ではそのときに、被疑者・被告人は、弁護人に違法なことを頼んだりしないのか。
立会いの無いのをよいことに違法な相談はしないのか。
無論そういうこともあるかもしれない。
しかし、弁護人は、被疑者・被告人の正当な権利の擁護者であって
違法なことには決して荷担しない。
弁護士倫理として、厳しく戒められているのである。
それは、「証拠の包丁を隠蔽してくれ」などという直接的な要望に応えられないのみならず、「女房に『天井裏の紙袋を、社長に渡してほしい』と伝えてください」というような
怪しい伝言も伝えられない。

弁護人はそこで「スクリーニング」する訳である。

こういうスクリーニングは弁護人として、当然、行うべきであるが
本作では、弁護人がスクリーニングしている様子が全く見えない。
弁護士倫理の規制を受ける弁護士としてはこれはどうなのか、と
読みながらどうしても気になるのである。

そして、ラスト。
実はこの弁護士が殺人を犯す。
あっと驚く場面である。
しかし、その動機はどうなのか。
依頼者に騙される弁護士は少なくない。
どの弁護士でも多かれ少なかれそういう経験はしているであろう。
そうであれば、弁護士たる者がこのような動機で殺人を起こすか、というのが
最後の疑問である。

もっとも以上の点は、私が弁護士だから感じたところであろう。
どうぞ気にせずに読んでいただきたい。
冒頭に述べたとおり、ミステリとしては三転四転して大変面白い。

とはいえ、実務に詳しく、実務と違う記載のあるミステリに対して
よく批判されていた今は亡き佐野洋氏が存命なら
どのように語られたか聞いてみたい気もする。
# by kazuo_okawa | 2014-01-09 02:19 | ミステリ | Trackback | Comments(3)
1月6日付け朝日新聞によれば
JR大阪駅の駅ビル「大阪ステーションシティ」で
通行人の顔をカメラ約90台で撮影し、その顔の特徴を登録して
同一人物を自動的に追跡する実験がこの4月から始まる、という。
顔認証技術の精度を確かめるのが狙いで、データは
個人が識別できない処理をしたうえで、JR西日本に提供される。

これは総務省所管の独立行政法人「情報通信研究機構」が
JR西日本とステーションシティを運営する「大阪ターミナルビル」の協力を得て、
2年間実施する、という。

実験では、各カメラで3メートル四方にいる数十人の顔を撮影する。
両目間の幅など100カ所程度の各人の顔の特徴を抽出して
特定のIDを与えて登録し、別のカメラが同じ特徴を持つ顔を識別すると、
同一人物と判断して追跡する仕組みだという。

以上が、朝日の記事の内容であり、監視カメラ技術の進歩など色々な事を考えさせるが、
一番思うのは、道行く人の了解を取っているのか、
(あるいは少なくとも知らせているのか)
ということであろう。

勝手に、人の顔を撮影するのは肖像権の侵害である。
ところが、この実験は単に、顔の撮影だけでなく
その人の行動を追跡するのである。

普通に考えて、単に「肖像権」以上の権利侵害だと通常考えられるのではないだろうか。

これで思い出すのが、約20年前に、
釜ヶ崎合同労組委員長稲垣浩氏の依頼で
後藤貞人弁護士と私が受任した(後に大弁護団に拡大)釜ヶ崎監視カメラ撤去訴訟である。

この裁判は、地裁、高裁、最高裁といずれの判決も
釜ヶ崎内の監視カメラ15台中、合同労組の建物を狙ったカメラについて
それは犯罪予防の目的を超えるとしてその1台の撤去を認めたのである。

この裁判で、私達は、肖像権以上の権利侵害があるとして
それは「監視されない権利」だと構築した。
判決は、私達が主張したこの「監視されない権利」を
プライバシー権と同じだとして
結局、前述のカメラ1台の撤去を認めたのである。

この判決は,初めて、公道でも(顔をさらして歩いていても)
プライバシー権が認められるとした、画期的な判決である。

冒頭の朝日新聞の記事は、この監視カメラ撤去訴訟を想起させる。

無論、公的エリアか私的エリアか、
或いは目的は何か、目的外使用はないのか、など
細かい議論はある。

しかし、重要なのは、道行く人の行動を
勝手に撮影するのは、何よりもまず、プライバシー権侵害である、
ということを誰しもが自覚するべきということであろう。
規制や利用の議論はその次である。

そうでないと「人権を尊重する社会」とは到底いえない。
# by kazuo_okawa | 2014-01-08 00:35 | 情報・プライバシー | Trackback | Comments(0)