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私の趣味やニュースの感想など好きなことを発信するブログです


by kazuo_okawa

潔い敗北

王位戦七番勝負第5局が8月24、25日に行われ、挑戦者の豊島将之竜王が藤井聡太王位に敗れた。
手数は77手、終局時刻が16時47分と非常に早い投了である。

先手藤井二冠の戦型選択が「相掛かり」
この間、対豊島戦で比較的に分の悪かった戦型をあえて採用するところに、目の前の勝利よりも、棋理を追及する姿がうかがえる。

封じ手前で、私は豊島竜王は負けるだろうと思った。
豊島流の「勝利の方程式」ではないからである。
日々成長する藤井二冠は叡王戦第2局のような逆転も少なくなっている。

終局後のインタビューで豊島竜王は言う。
-(27手目)76歩までは考えていた。
封じ手局面で自信がない、というか悪いか。
(封じ手前の)44角が良くなかったか、しかしそれに代わる手もなかなか難しい。
とするとその前で良くなかったか。
封じ手後、一晩考えたがよくならない。…。

うん?一晩考える、と!

かくて77手の早い終局。
素人目にはまだまだ終盤のほんの入り口である。
「大逆転将棋」のようにアマチュアでは勝ち切るのはまず難しい場面であろう。
現にAbema聞き手野田澤彩乃女流初段は、この後を引き継いで確実に勝てる自信はないと率直に開かす。

解説屋敷伸之九段は、相手の強さを分かっているから、その信用のもとに早い投了をしたので潔いと賛辞する。

思えばこの投了図こそが、互いにリスペクトし合う超一流トッププロ同士の証であることを端的に示しているであろう。

豊島竜王は
「さらに努力を重ねる」
「王位戦は競ったスコアにできなかったので、楽しみにしてくださった方に申し訳なく思っています」といつものようにクールに述べた。

こういう謙虚さも豊島竜王の魅力である。

【8月27日追記】
本日付けスポーツニッポンを購入すると実に興味深い記事が出ていた。藤井二冠は、豊島竜王から学ぶべき点はまだあったという。
王位戦第5局、竜王自ら「相当悪い手」と告白した悪手50手目75銀に対する、藤井二冠の正確な応手に竜王が自らの誤りを悟ると、なりふり構わずその銀を只捨てした場面である。
その切り替えの早さを藤井二冠は「流れを断ち切って、最善を追求する姿勢が強さの秘密。自分も見習わないと」と述べている。
この「銀損」の場面、名手松本博文将棋ライターは「「銀損」を甘受して少しでも勝負のアヤのある順を選んだ」「これは、ある意味感動的な手です」と賛辞している。
誤算と気づいた後に、最善を追求する姿勢に超トッププロ同士は通じ合っていることに感銘するのである。

【さらに8月27日追記】
藤井二冠は最新作『考えて、考えて、考える』の中で、対局中でミスに気付くと精神的に結構落ち込む、しかし対局中に反省するのはよくないので「現状における最善手を探すようにしています」と述べている。


# by kazuo_okawa | 2021-08-26 06:13 | 将棋 | Trackback | Comments(0)

トップの責任

今朝の新聞を見れば、市民らがが襲撃された事件で殺人・組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などの罪に問われた特定危険指定暴力団工藤会トップの野村悟被告人らの判決公判が24日、福岡地裁で開かれ、足立勉裁判長は、野村被告人を事件の首謀者と認定した上で求刑通り死刑を言い渡したという。

被告人の関与を示す直接的な証拠がない中、判決は「推認」を重ねたという。
即ち、上意下達が厳格な工藤会の意思決定は「最終的に野村被告の意思により行われていたと推認できる」と指摘したうえ、上層部に嫌疑が及ぶ恐れがある重大事件を「組員が無断で起こすとは到底考えられない」としている。

裁判では直積的証拠がないケースもあることから、「推認」を重ねるという手法事態は何らおかしくない。

裁判に出た証拠を見ていないので、何とも言えないが、ニュースを見る限り、前記の「推認」にそれなりの根拠があったのだろうと「推認」される。
ただこの種の手法で「死刑」とはいささか驚く結論である。
とはいえ控訴上告しても、おそらく首謀者の認定は変わらない気がするが、量刑が変わる可能性はあるだろう。

さてそれはともかく、このニュースで思うのは安倍元首相の責任である。
「もり・かけ・桜」で、公務員などが「勝手に」するだろうかと疑惑がぬぐえない安倍元首相である。

例えば、国会で118回嘘をついた「桜を見る会」疑惑。

つい先ごろ、検察審査会は「不起訴不当」とした。
担当弁護士の話では「安倍氏の『秘書がやったことで知らなかった』という発言について、検察審査会は『国民感情として納得できない』と示した」という。

この審査会論理は工藤会判決に照らしても、ある意味で当然だろう。

工藤会事件では、市民の安心安全のために努力を重ねた検察へ喝采をおくったものは多かったと思われる。
同じように、桜疑惑でも、再捜査する検察には是非とも市民の信頼を勝ち得るよう、巨悪に迫ってほしいものだ。

# by kazuo_okawa | 2021-08-25 17:35 | 司法・ニュースその他 | Trackback | Comments(0)

何を今更…

今朝の毎日新聞一面トップは
厚生労働省と東京都が、23日に、改正感染症法に基づき、都内の医療機関に対して新型コロナウイルス患者の受け入れや病床確保、宿泊療養施設への人材派遣などを要請したというニュースである。

逼迫する医療体制への対応だというが、何を今更との思いがぬぐえない。
この1年以上アベ菅政権、小池都知事は、一体何をしてきたのだろうか。
もっぱら国民に「自粛」を強いてきたとの思いが強い…。

「重症」を「中等度」とランク落ちさせ、「入院拒否」を「自宅療養」と呼び変え、本来救えるはずの命が救えないとなるともはや「医療崩壊」と言っても良いであろう。

東京パラリンピックで、競技会場で大会関係者に傷病者が出た場合に受け入れる「指定病院」の都立墨東病院が、救急で重症者を受け入れてほしいとの要請を断っていたというニュースはつい数日前のことである。

新型コロナウイルス感染症の感染爆発で、医療が逼迫していることが理由であるが、コロナ治療優先と考えると、大会関係者の傷病者治療受け入れなどとうていその余裕のないことは想像できる。

オリンピック・パラリンピックの開催が無謀であることが改めて思い起こされる。
毎日一面記事は、色々な意味で悲しい…。

# by kazuo_okawa | 2021-08-24 08:17 | 司法・ニュースその他 | Trackback | Comments(0)

快勝譜!

いやあ、いい勝負でした。

叡王戦五番勝負第4局が8月22日に行われ、豊島将之叡王(竜王)が藤井聡太王位・棋聖に91手で完勝した。
藤井二冠は将棋界の至宝であるが、八冠制覇までの壁は高くあってほしいという思いと、かねてからの豊島竜王ファンとしては久々の痛快な一局である。

もともと豊島竜王は藤井二冠の「天敵」と呼ばれた。
初対局以来大差をつけるも、今年に入り藤井二冠が封印を解いて「角換わり」を用いてからはむしろ藤井二冠の勝利が続く。
そこで豊島二冠は藤井二冠には敗れていない相掛かりを王位戦第4局で採用し、敗れたとはいえ手ごたえは感じたであろう。

叡王戦はシリーズ1勝2敗とカド番に追い詰められていた豊島竜王であるが、その状況で先手番から相掛かり。
中村太地七段らの解説や感想戦を聞くと36手目「相掛かり先後同型」はテーマ図。
そして41手目79金が研究手。

<序盤でリードを奪い、中盤で時間差をつけ、藤井二冠の終盤力を発揮させない>というまさしく「序盤、中盤、終盤隙がない」豊島スタイルで完勝した。
対局姿も、殆ど動きのない豊島流。
一方、藤井二冠は久々にガックシポーズ。

これで決着は最終第5局に持ち込まれたが、先手必勝のこのシリーズ、振りゴマは大きいい。
とはいえ、藤井二冠は次局までの3週間の間に更に強くなるだろう。
最終局はいずれにせよ相掛かりで決着だろう。
今から実に楽しみである。

【追記】
明日からは王位戦第5局である。先手番藤井二冠がエース戦法角換わりでいくのか、一昨日敗局の相掛かりでいくのか、その戦型選択も楽しみである。


# by kazuo_okawa | 2021-08-23 12:44 | 将棋 | Trackback | Comments(0)

過去の背負い方

8月21日付け朝日新聞朝刊「耕論」は考えさせられる。
テーマは、東京五輪開会式で過去の発言・表現をめぐり関係者が相次いで降板したことから、過去の責任はどうすれば果たされるのかというもの。

作家中村文則氏は、まず温かな人道主義者ドストエフスキーが好きだがユダヤ人への悪い描写があることを指摘し、作品と人格は受け手が判断すべきものと述べる。
合わせて小林賢太郎氏がホロコーストのネタの後、「笑いがだれかを傷つける恐れがあること」を語っているから、その変化を議論すべきであった、小山田圭吾氏の場合は謝罪が唐突な印象を受けたので、いつかこの件で話した方が良い、と異なる対応の指摘が作家らしい深みを感じさせる。

法哲学者瀧川裕英氏は、過去は変えられないから人は過去の責任を問われる、だから過去の責任を果たさないといけないし、加害者が責任を果たしたときは再出発の機会が与えられるべきだが、責任を果たす行為は難しい、だからこそ責任について考え続けるしかない、という。
学者らしく普遍化していく論理の進め方に、先の戦争における日本の「加害責任」と同じだな、と思わず感じてしまう。

そう思って3人目軍事史学会理事小菅信子氏の論考を読むと、中段に「戦後の和解にも通ずる」と出ている。
お、おっと!
現に小菅氏は、戦後の国家の講和では「忘却」にならないと続け、過去の辛い記憶は消せなくても、その上に「好ましい記憶」を積み重ねる「記憶のマネジメント」の重要性を指摘する。

3氏の視点が異なるだけに、非常に勉強になる記事でした。


# by kazuo_okawa | 2021-08-22 11:16 | 司法・ニュースその他 | Trackback | Comments(0)