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by kazuo_okawa

カテゴリ:ミステリ( 142 )

5月5日、私たちが45年前に作った
京都大学推理小説研究会の設立45周年記念同窓会が開かれた。

同窓会と言えば通常「懇親会」だけであるが、
後輩たちが、記念行事も企画してもらった。

当研究会設立の頃に学生だった青学大ミス研OBで翻訳・評論家の日暮雅通氏、明大ミス研OBの若手ミステリ作家青崎有吾氏と、京大OBの我孫子武丸氏、円居挽氏との東西ミステリ研座談会である。
大学も違い、また世代も違うので大変興味深い座談会であった。

青崎氏とお会いするのは始めてだったが、在学中「京大ミステリ研のようにしたい」と思っていたと発言して頂いたのは嬉しい。
処女作は、綾辻行人館シリーズのオマージュである。

日暮氏は古くからの友人、同世代であるため共感するところが多い。

我孫子氏は才能ある後輩。
「ミステリ研」であったからこそ作家デビューした。ミステリ研なくば作家はなく、ミステリ研であったことにデメリットはないといわれたのは嬉しい。

円居挽氏はシャ―ロキアンであり、注目している後輩であるが、その辛口の話しぶりには初めて接した。
いやあ面白い。

私は、懇親会冒頭のあいさつでも述べさせていただいたが、私たちの作ったサークルが、45年も後輩が継承していただき、加えて少なからず日本のミステリ界に影響を与えたのであるからこれほど嬉しいことはない。
(京大ミステリ研と作家群に関心ある方は、拙著『ホームズ!まだ謎はあるのか?』(一葉社)をお読み下さいませ)。

さて当日の参加者が何人もツイッタ―を挙げている。

下記は、円居挽氏のツイッター。

ここでいう「京大ミステリ研創設メンバー」とは私のことである。

「今日の京大ミステリ研創設メンバーの話。やる気のある人が抜けたらそれで終わりという批判に対し、システムを作れば存続は可能だと主張。犯人当てと読書会、機関誌発行という定例会や仕事を作ったという。45年間、確かにそれだけはやってきた。でもやばい人が絶えず供給され続けただけかもしれない。」

実に痛快で面白い!
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by kazuo_okawa | 2019-05-06 18:38 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

砂の器・リメイク版

過去の名作ミステリを現代風にアレンジする。
現代的ながら、その名作の中枢をうまく生かすと作品の魅力はより倍増する。
初めて出会ったワトスンに対して、シャーロックホームズがいきなり名推理を披露した
「アフガニスタン帰りですね」の名台詞。

それを生かした、その現代版『シャーロック』などはその典型だろう。

3月28日放送のフジテレビ開局記念特別番組『砂の器』を録画で見る。
社会派の名をほしいままにした松本清張氏作であり、1974年に加藤剛・丹波哲郎・森田健作らの映画化以来何度もドラマ化された不朽の名作である。

今回は、2018年のハロウィーン当日の渋谷が舞台となり、東山紀之が捜査1課の刑事・今西栄太郎、天才作曲家・和賀英良役は中島健人である。
和賀は、差別に苦しんだ「過去」を変えて、成功への道を歩む。
そのときに過去を知る人物に出会うことから事件が起こる。
事件の発生時期や状況、そして、大臣への「忖度」という言葉など、まさに現代的である上、原作の魅力的な手がかり「東北弁のカメダ」などキーワードはそのまま残されており、うまく作られている。

そして今回は、真犯人を、原作「ハンセン氏病者の子」から「殺人犯の弟で息子」という設定にしている。
子供が「差別」に苦しむ、という状況は同じであり、その苦しみは、ハンセン氏病差別も殺人者の家族に対する差別も同じである。

しかし、事件は過去を知る被害者が、真犯人に「父に会うように」と勧めたことから、「過去」を知るこの人物を殺害するのである。
社会派松本清張は「ハンセン氏病」差別を告発した。
その原作に忠実な、74年映画では、「父に会うように」勧めた被害者には私は心理的共感を覚える。
だからこそ、被害者、加害者の両者に対して共感を覚え、それゆえにクライマックスに深い感動を覚える。

しかし、今回の作品で、「(殺人者たる)父に会うように」勧める被害者に共感を覚えるだろうか…。
(整合性を持たせるために、まず大量殺人犯(和賀の弟)が家族を苦しめ、父もその差別の中で殺人を犯したと工夫をしていることはわかるが、余りに技巧的であるなと、感じてしまうのである)

俳優を変えた、砂の器・リメイク版は何作も見たが、その度に、1974年版(加藤剛・丹波哲郎・森田健作)が一番素晴らしいと改めて感心するのである。
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by kazuo_okawa | 2019-04-13 23:35 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
木村拓哉、長澤まさみら豪華俳優陣で話題を呼ぶ映画「マスカレードホテル」を見に行く。
東野圭吾のヒット作の映画化である。

(少しトリックに触れています)

もともと原作自体が面白い。
映画も、ほぼ原作に忠実で、面白く見られた。

もっとも私自身は、原作にある、潜入捜査官新田(これを木村拓哉が演ずる)がホテルの客のカバンを勝手に開けようとするところ、有能なホテルマン山岸(これを長澤まさみが演ずる)が体を張って防ぐ、というシーンが印象に残っていたのだが、それは映像化されていなかった。

実はその点がいささか残念なのであるが、それでも作品自体は素晴らしい。

「マスカレードホテル」の事件は「連続殺人事件」であり、犯行現場に同じような謎の数字の記号がおかれていることから、同一犯の連続殺人とみられる。

この「連続殺人モノ」は、いわゆる「見立て殺人」モノを始め、本格ミステリにおける一つのパターンである。
しかし何といっても東野圭吾のアイデアは、次の殺人場所が予告されているというところにあり、それが舞台をホテルにする工夫である。
しかも、そこに登場するホテルの客の怪しさと、客を疑う刑事と、客のいかなる注文も受けつけ客の満足を第一義に考えるホテルマンという組み合わせに感心する。

そして中心トリック。

この「一人ずつ連続で殺される」ということ自体が、実は、「目くらまし」というのであるから、実は東野圭吾のこの趣向が面白い。

東野圭吾はこれまで同じようなトリックを全く違う作品に仕上げてきたことがあったが、このトリックも(一見それと気付かれないように)全く違う作品でも使われるのではないだろうか。
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by kazuo_okawa | 2019-02-10 15:35 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

和久峻三氏、死す!

今朝の朝日新聞を読んでいると、「赤かぶ検事」シリーズなど法廷ミステリーで著名な推理作家和久峻三氏が亡くなられたとの記事が出ていた。

京大法学部出身で弁護士、そしてミステリ作家である。

世代も違い、面識も全くないが、勝手に「縁」を感じよく読んできた。

人気作家であったが、そのミステリ自体は、いささか啓蒙的であり、ミステリ・マニアには必ずしも受けが多いわけではなかった。
それでも、1988年4月に発表された『雨月荘殺人事件』(中央公論社)は話題を呼び、日本推理作家協会賞を受賞している。

この作品が何故話題を呼んだかといえば、「公判調書ファイルミステリー」という副題の通り、我が国の刑事司法の実際の調書を本物そっくりに踏襲するという形式をとっていたからである。
通常ミステリといえばB版サイズだが、調書そっくりにするために、本書はA版サイズで箱入りであった。

当時私はすでに弁護士になっていたが(実際の調書を知っているだけに)その細部のリアルさと、凝りに凝った構成に感心したものである。

実は和久氏のアイデアは、その半年前に「世界初の捜査ファイルミステリ」と銘打たれた『マイアミ殺人事件』(中央公論社)に刺激されたものであった。

この『マイアミ殺人事件』も実際の捜査ファイルの形をとり、そしてなんと証拠品としての「金髪の毛髪」、「マッチの燃えカス」の現物が透明袋に入ってついているのである。この趣向にも当時唸ったものである。

こういう先行作品があるとは言え『雨月荘殺人事件』のような作品は和久氏でなければ書けなかっただろう。
非常に懐かしく、そして、悲しい。
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by kazuo_okawa | 2018-12-30 15:13 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

祝!ミステリ文学大賞!

実に嬉しいニュースである。

このたび、光文文化財団が主催する「わが国のミステリー文学の発展に著しく寄与した作家および評論家」に贈られる第22回日本ミステリー文学大賞に、我が京大ミステリ研出身作家の綾辻行人氏が選ばれた。

同特別賞は、文芸評論家の権田萬治氏という。

日本ミステリー文学大賞者は第1回に佐野洋氏、第2回中島河太郎氏のほか、これまで笹沢左保氏、土屋隆夫氏、島田荘司氏、逢坂剛氏など錚々たる人たちが並んでいる。

この賞の特徴的なの「作品」に贈られるのではなく、「人」に贈られるということだ。
それゆえ、優れた作品を発表したことは無論のこと、長年にわたって活躍することが必要である。

今や新本格の旗手ではなくて、本格ミステリ界の重鎮となられたことを思えば、綾辻氏に贈られるのは当然だろう。

京大ミステリ研のエースである彼の受賞は、同研究会のオリジナルメンバーとして嬉しいが、綾辻氏から直接受賞のニュースを知らせて頂いたことも更に嬉しい。
受賞を心から喜びたい。
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by kazuo_okawa | 2018-11-07 00:36 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
日本シャーロックホームズクラブの友人である飯島一次氏が、二見時代小説文庫として、『将軍家の妖刀―小言又兵衛 天下無敵2』を発刊された。

将軍家をお護りする御書院番を御役御免となって十一年になる小言又兵衛こと石倉又兵衛が主人公である。

暇を持て余す又兵衛の唯一の楽しみが、市井の芝居であり、三助に下見に行かせるもその三助が食い逃げ犯に出くわす。
腹をすかせた食い逃げ犯の父子は実は仇討を果たす途中だという。
仇討の言葉に心を躍らせる主人公又兵衛。
この仇討はどうなるのか。

一方、又兵衛は芝居の桟敷で将軍家お世継ぎの大納言・家治卿とその連れ又兵衛の娘婿の源之丞に出会う。
その帰路、幕府転覆を狙う一団に、又兵衛は家治から託された名刀を一陣の疾風の如く振るって両断する。
タイトルの「将軍家の妖刀」である。

とまあ、錯綜したストーリであるが軽妙なタッチで読ませる。

そしてシャーロックホームズクラブ員らしくミステリ風味が、面白い。

飯島氏は時代状況の設定もしっかりされている。
是非お読みいただきたい。
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by kazuo_okawa | 2018-10-31 19:51 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

沈黙のパレード

東野圭吾の新作である。

帯文句が凄い。

「ガリレオ、再始動!
容疑者は彼女を愛したふつうの人々。
哀しき復讐者たちの渾身の謎(トリック)が、
湯川、草薙、内海薫の前に立ちはだかる。
東野圭吾の最新長編。前人未踏の傑作が誕生」
である。

このうたい文句を読めばミステリファンなら買わずにはおられない。

帯文句に言う『彼女』とはみんなに愛されるも行方不明になって死体で発見された女性。
そしてその彼女を殺したと思われる人物Aが殺された。
その彼女を愛した人々が容疑者というのは、このA殺人事件の容疑者というわけである。

【以下、物語の「構想」を明かしていますのでご注意ください。】

『再始動』のうたい文句の通り、シリーズキャラクターの強みを存分に生かしている。
ガリレオ湯川をアメリカ帰りにして、警察への協力姿勢を、以前のやや消極的な姿勢とは変える。

湯川は過去の事件『容疑者X』に言及し、また関係者の料理屋で食事する場面は『真夏の方程式』を思わせる。

そしてミステリの核心であるが、
物語を読み進めれば、ミステリファンなら、誰しもクリスティの『オリエント』を思い浮かべるだろう。
それゆえ読者としては<哀しき復讐者たちの渾身の謎(トリック)>だけがメインではないだろう。
まあ、何かあるのだろうと思ってしまうのである。

しかしそれは、東野ならば当然予測できる事である。

そこからがうまい。
最初のドンデン返しが本格ミステリならではであり、これだけでも見事であるが、東野はさらにもう一ひねりするのである。

そして、その最終的な読後感がいい。

ところで映画などで観た主役湯川が、左手の親指、人差し指、中指を開いて顔に当てて考えるポーズ。
あれ、『フレミング』とは気づかなかった…。
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by kazuo_okawa | 2018-10-14 22:58 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

高木彬光、生誕の地!

熱心な本格ミステリファンなら高木彬光をご存知だろう。

高木彬光とは、1920年青森市生まれ。
青森中学より旧制一高を経て京都大学薬学部入学ついで工学部冶金学科に転じ、卒業後民間会社に就職するも敗戦により失業。
窮乏の中で探偵小説を書くことを決意し、処女作『刺青殺人事件』でデビュー、その後、数々のヒット作を飛ばし、日本のミステリ界をけん引してきた本格推理作家である。

京大ミステリ研ならなおのこと、京大の大先輩にもあたる大御所高木彬光を知らないことはありえない。

さてその高木彬光は実は17歳まで青森の生家で過ごし、そしてその場所が青森の観光名所として記されている。

4日夕刻、観光案内所へ行く。

「高木彬光生誕の地へ行きたいんですが」
「ん?」
「高木彬光。推理作家でしょう。」
「ええ?」
「いや観光地図にも載っているんで、そこへ行きたいんですが」
「ええと、高木ですね、ええと高木、高木と、2番だから、ああここですね。ここへ行くには…」

かつての大御所も、今では、まあこんなもんなんですね。
それにしても、観光案内所というのが少し悲しい…。
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by kazuo_okawa | 2018-10-05 00:03 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

村山聖の勧めたミステリ

25日、ニコ生叡王戦予選の解説を増田裕司六段が行っていた。

増田六段は、弟子を多数有する森信雄門下であり、年齢的には羽生世代の「やや下」という関西のベテラン棋士である。

解説中、森信雄一門天才村山聖(贈九段)の話題となり、映画「聖の青春」などに出ていない数々のエピソードを披露されていた。
いずれも面白いが私にとって興味深かったのは、村山聖九段はミステリファンであったということだ。

棋士でミステリファンは多い。

「本格ミステリは詰将棋のような趣がありますからね」と言ったのは羽生竜王である。
豊島二冠は一時綾辻行人を読んでいた。
香川女流はシャーロキアンである。
…とまあ、将棋とミステリは親和性があるところ、天才村山聖は東野圭吾のファンであったというのが興味深い。

そして増田六段曰く、村山九段から勧められた東野ミステリが『仮面山荘の殺人』だったという。

いやいやこれは凄い。
実にマニアックである。

何故なら本作は、東野ミステリの中では「本格派ミステリ」に位置し、おそらく東野ファンの中で本書を推薦する人は少ないだろう。

しかし本格ミステリは終盤が醍醐味である。

そう考えれば、「終盤は村山に聞け」
無類の終盤力を武器とする居飛車党力戦派の天才村山聖らしいともいえるのである。
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by kazuo_okawa | 2018-09-28 22:23 | ミステリ | Trackback | Comments(0)

到達不能極を読む!

江戸川乱歩賞は、嗜好や現実性などで評価が分かれることもあるが、いろんなミステリの賞の中でまず「はずれ」は少ない。

私も毎年、楽しみにしており(昨年は受賞作なしであったが)今年も発売されてすぐに買った。
斎藤詠一氏の『到達不能極』である。

【以下ネタバレに近いのでご注意ください】

表紙が凄い。
一番大きく、しかも赤い文字で「爆誕!」
さらに「衝撃の”受賞作なし”から1年―。こんな熱量を、興奮を待っていた!」

こんな見出しなら、多くのミステリファンはワクワクして買うだろう。

過去と現在を交互に描くという、まあ、ミステリとしてはよくある手法で、無論お約束通り、過去のある人物と現在のある人物が「同一人物」としてつながる(本作では物語の中盤で明かされる)。

舞台のスケールは大きく、サスペンスタッチであることは間違いないだろう。

しかし私には、中核のSF部分がどうにも受け付けない。

私自身は、エンターテインメントとしてのSFは、それはそれで否定していない。

しかも本作のテーマでもあるこの部分は、昨今のAIやロボットの登場などから「意識とは何か」という実に興味深いテーマと絡む。
それだけにテーマとしては面白いのだが、しかしあの時代に、あれはないでしょう、と思ってしまうのである。
(あの時代のコンピュータを知れば知るほどそう思う)

結局、このSF部分を受け入れられるかどうかが、本作の評価に大きくかかわるだろう。

湊かなえ氏の選評が優しくて好ましい。
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by kazuo_okawa | 2018-09-25 01:33 | ミステリ | Trackback | Comments(0)