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by kazuo_okawa

2019年 07月 07日 ( 1 )

東野圭吾の最新作『希望の糸』を読んだ。

【以下、作品のトリックを明かすつもりはありませんが知りうる可能性がありますので、ご注意ください】

物語は、震災で二人の子供を失い希望も失った汐見夫妻が再び子供作ることによって希望を取り戻す。
一方、料亭旅館の女将吉原亜矢子は先代からの顧問弁護士からある事実を打ち明けられる。
そしてお洒落なカフェを営む花塚弥生が殺される。
この事件を担当するのは加賀恭一郎シリーズにおける加賀の従兄弟にして相棒、松宮修平。彼は事件の捜査とは別に、吉原亜矢子から連絡を受ける。

実はこのように、汐見のストーリー、亜矢子のストーリー、弥生のストーリー、そして事件を負う松宮のシトーリーが並行して進む。そして松宮は自己の秘密にも直面する。

ここまで読めば事件の秘密と捜査役の秘密が並行して描かれる『祈りの幕が下りる時』を思い出す。

そして現に、ある種の「絆」が大きな動機となるのは共通である。
また、『祈りの幕が下りる時』では、今日では「うつ」なんだろうが当時は…、という下りがあるが、『希望の糸』ではLGBT、といくつかの類似性を思い出す。

無論、トリック、背景は異ならせており、全く別の作品であることは言うまでもない。

しかし、やはり、『白夜行』と『幻夜』、『容疑者Xの献身』と『真夏の方程式』のような関係を思い起こさせる。

ストーリーは、汐見と花塚が結びつくのだが、背景としての医療ミスは、あるだろうなと思わせ違和感を感じない。
かくて花塚事件の真相も明かされ、また松宮の秘密も明かされる。

時に泣かされ、そして気持ちの良い読後感で終わらせる。
相変わらず見事である。

加賀シリーズは終わったのかと思わせながら、こういう形で加賀シリーズが復活するのであれば、東野ファンにとって最大の嬉しい驚きだろう。

私は本格ミステリはきれいに騙される爽快感にあるとおもっているので、<謎を見破ってやろう>などという野暮な読み方はしないが、本作の最初の方で被害者のスマフォから出てくる固有名詞が幾つもあげられたときには<本格作家ならここに伏線を張るだろうな>というある種の勘が働いた。

本作で加賀は繰り返し「刑事の勘」について述べるが、ミステリファンとして私も、本作では「勘」が働いたようである。
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by kazuo_okawa | 2019-07-07 09:39 | ミステリ | Trackback | Comments(0)