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by kazuo_okawa

2019年 04月 13日 ( 1 )

砂の器・リメイク版

過去の名作ミステリを現代風にアレンジする。
現代的ながら、その名作の中枢をうまく生かすと作品の魅力はより倍増する。
初めて出会ったワトスンに対して、シャーロックホームズがいきなり名推理を披露した
「アフガニスタン帰りですね」の名台詞。

それを生かした、その現代版『シャーロック』などはその典型だろう。

3月28日放送のフジテレビ開局記念特別番組『砂の器』を録画で見る。
社会派の名をほしいままにした松本清張氏作であり、1974年に加藤剛・丹波哲郎・森田健作らの映画化以来何度もドラマ化された不朽の名作である。

今回は、2018年のハロウィーン当日の渋谷が舞台となり、東山紀之が捜査1課の刑事・今西栄太郎、天才作曲家・和賀英良役は中島健人である。
和賀は、差別に苦しんだ「過去」を変えて、成功への道を歩む。
そのときに過去を知る人物に出会うことから事件が起こる。
事件の発生時期や状況、そして、大臣への「忖度」という言葉など、まさに現代的である上、原作の魅力的な手がかり「東北弁のカメダ」などキーワードはそのまま残されており、うまく作られている。

そして今回は、真犯人を、原作「ハンセン氏病者の子」から「殺人犯の弟で息子」という設定にしている。
子供が「差別」に苦しむ、という状況は同じであり、その苦しみは、ハンセン氏病差別も殺人者の家族に対する差別も同じである。

しかし、事件は過去を知る被害者が、真犯人に「父に会うように」と勧めたことから、「過去」を知るこの人物を殺害するのである。
社会派松本清張は「ハンセン氏病」差別を告発した。
その原作に忠実な、74年映画では、「父に会うように」勧めた被害者には私は心理的共感を覚える。
だからこそ、被害者、加害者の両者に対して共感を覚え、それゆえにクライマックスに深い感動を覚える。

しかし、今回の作品で、「(殺人者たる)父に会うように」勧める被害者に共感を覚えるだろうか…。
(整合性を持たせるために、まず大量殺人犯(和賀の弟)が家族を苦しめ、父もその差別の中で殺人を犯したと工夫をしていることはわかるが、余りに技巧的であるなと、感じてしまうのである)

俳優を変えた、砂の器・リメイク版は何作も見たが、その度に、1974年版(加藤剛・丹波哲郎・森田健作)が一番素晴らしいと改めて感心するのである。
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by kazuo_okawa | 2019-04-13 23:35 | ミステリ | Trackback | Comments(0)