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by kazuo_okawa

2018年 09月 09日 ( 1 )

関西の若手強豪糸谷哲郎八段の若かりし頃のエピソードである。

将棋棋士は四段になってプロであり、三段以下はプロではない。
プロになろうとするものは、そのプロ養成機関「奨励会」に入って一定の成績を積み上げて昇給昇段していく。
一勝の重みは大きく、一局の勝敗が明暗を分けることもある。
極端に言えば人生を左右する。

そんな、糸谷八段の修業時代、奨励会2級の時の話である。

問題の対局相手は、現在の名人佐藤天彦少年で当時1級。
両者持ち時間を使い果たして「1分将棋」になっていた。
しかし形勢は糸谷必勝態勢。

ところが事件は起きた。

何と、糸谷少年は、取った駒を(自分の駒台に置くのではなく)相手の駒台においたのである。

こんな出来事は今まで聞いたことがない。
前代未聞の事件である。
どうなるのか。

そこで奨励会を世話する幹事井上慶太九段がその場に現れた。

井上九段とは、
弟子を沢山有し、現在のタイトルホルダー菅井竜也王位やA級棋士稲葉陽八段などを育てた一流の棋士である。
その育て方は名伯楽ともいわれる。
アマチュアへの指導も非常に優しい。
言わば「ほめて育てる」という人間術の達人である。

その井上九段が、近づいてきて糸谷・佐藤戦の状況を見るや述べた。

「それは反則負けやな」

その瞬間、糸谷2級はその場で大泣きした。

後に「怪物」という異名をとる今の糸谷八段の姿からは到底想像できないが、その糸谷少年が大泣きしたのである。

そのとき井上九段はどう言葉をかけたか。

その場で大泣きしている糸谷2級を前にこう述べたのである。

「君が棋士になったら、これは絶対いいエピソードになるんや」

糸谷少年は泣き止み、そして笑ったという。

これは怪物糸谷八段のエピソードとして有名であるが、むしろ、「言葉の魔術師」井上九段のエピソードでもあるだろう。

【追記】
「将棋世界」最新号は、「光り輝く関西若手天才少年たちの仰天秘話」という特集を組みこの糸谷エピソードも紹介されている。
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by kazuo_okawa | 2018-09-09 07:32 | 将棋 | Trackback | Comments(0)