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by kazuo_okawa

2014年 08月 11日 ( 1 )

乱歩賞・闇に香る嘘

2014年第60回江戸川乱歩賞「闇に香る嘘」が発売された。
うまいもんである。
乱歩賞で久々にミステリの醍醐味を味わった。

私は、基本的には乱歩賞びいきであり、毎年、水準以上の作品であると思っている。
しかも近時は夏休みを狙ったかのように発売されるのでこの時期の楽しみの一つでもある。
中でも本作はかなり良い。

【以下、ネタバレしています】

主人公は盲目の老人でありしかも語り手。
設定がなかなか斬新である。
盲目の主人公自体は珍しくはないが「語り手」としているところが良い。
それゆえに「限られた認識」が興味深く、当然そこにトリックもある(だろうと読み進む)。

物語としては、いわゆる中国残留孤児を扱っていて、孤児たちの過酷な現実を背景として描く。
合わせて、孫娘への腎臓提供がかなわないという話がクロスすする。

そして中国から帰還した「兄」が「本当の兄なのか」という主人公(語り手)の疑惑が起こる。
いわゆる中国残留孤児の身元調査の際に、「入れ替わり」が生じないのか、と考えたミステリファンは少なくないであろう。
考えてみればそれをうまく利用された。

本作は、細かい伏線もうまい。
物語の中盤、「本物の兄」と名乗る者からの電話はスリリングであると同時に
読了後全ての真相を知ったときにこの場面を思い起こして「うまい」とただただ感心する。

実は「本当に兄なのか」という疑い自体が、
サプライズエンディングを際だたせる抜群のミスディレクションであり、
これこそ著者最大の「仕掛け」なのである。

「腎臓提供」にからめて始まった物語が、見事な対照を描いて、終息する。
これも良い。

いやいや久しぶりに楽しめました。
プロ転向後も期待出来そうな予感がします。
by kazuo_okawa | 2014-08-11 22:44 | ミステリ | Trackback | Comments(0)