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by kazuo_okawa

2014年 08月 02日 ( 1 )

映画「複製された男」

謳い文句に「ノーベル賞作家が挑んだ、世界最高峰ミステリー文学の映画化」とある。

そして「『脳力』が試される、究極の心理ミステリー」
「あなたは一度で見抜けるか」
とのキャッチコピーも。

何よりも、新聞広告に
綾辻行人
法月綸太郎
我孫子武丸
有栖川有栖
貴志祐介
という私の好きな本格ミステリ作家クラブの重鎮が推薦文を推している以上
これを見ないわけにはいかない。

【以下、ネタバレしています】

 大学で歴史を教える主役アダムは毎日退屈な生活を送っているが、ある日友人から教えて貰って借りて観たDVD映画に自分そっくりの俳優を見つけてその俳優を捜し出す。確かに俳優アンソニーは「瓜二つ」であり彼には妊娠中の彼女がいる。
 やがてアンソニーはアダムに「入れ替わり」を強要し、一日入れ替わる。しかし、アダムの妻は、アンソニーを見て、アダムでないことを見抜く。二人の口論が原因でドライブ中、運転を誤り、二人は事故死する。
 一方、アンソニーの彼女も、アダムを、アンソニーでないと見破るが、こちらはそれを伏せたままそれぞれ惹かれ合う。
 互いのパートナーがいなくなったのだから、アダムと、アンソニーの彼女の二人はこれから新生活を送るのだろう。そう思いながら、アダムがアンソニーの彼女の名を呼んでドアを開けたときに、そこに表れたのは巨大な蜘蛛というラストシーン。

以上が大体のストーリー。

こういうラストは「そもそも果たしてミステリなのか」との思いが残る。
ラストの「大きな蜘蛛」は、何らかの意味で「捕まる」とかいう「象徴」だろうか。

映画のコピーに<見抜けるか>とある以上、何か「真相」が隠されているようだが、
このラストだけでは分かりようがない。
アランドロンの名作「太陽がいっぱい」には、ラストシーンで
文字通り物語を「一転」させるものが出てくるが、
同じように、蜘蛛が、何かの「手がかり」かとも思い、
映画を振り返って回想したがそうでもなさそうだ。
本格ミステリなら、アンソニーと、アダムの妻の「事故死」が「人為的」なものである
というのが、まあ、定番の仕掛けですね。
そこで、アンソニーの好きなブルーベリーが無くなっていて、アンソニーが怒る場面があったが、ブルーベリーに睡眠薬を入れるというのはありそうである。
もっと言えば、本格ミステリなら、最初にアダムに映画を教えた友人も絡んでくるのが
普通であろうが、実際は絡んでこない。

そっくりな二人の人物という設定は、
読者が思っているのとは違う「時点」で入れ替わっている
というトリックがあるが、本作ではそれもなさそうだ。

冒頭のアダムの講義に頻繁に出てくる「コントロール」。
普通に「支配」「統制」といった意味だが
統計では、ある統計的実験のために、調査対象以外の「条件」は全く同じにした
別の「母集団」が必要とされるが、それも「コントロール」と呼ばれる。
アダム・カップルとアンソニー・カップルは
互いにその意味での「コントロール」のようにも見える。

とまあ、あれこれ考えてもう一度、綾辻さんらの推薦文を読み直す。
よく読むと、何処にも「本格ミステリ映画」とは書いていない。
彼らが本格ミステリ作家であるだけに、言わば勝手に本格ミステリ映画と思いこんでいた。

結局、彼らの推薦文自体が最大の「トリック」だったのである。
by kazuo_okawa | 2014-08-02 00:01 | ミステリ | Trackback | Comments(0)