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by kazuo_okawa

2014年 02月 03日 ( 1 )

2014年1月28日に、和歌山・人権研究所の
人権啓発研究集会に招かれて
「戸籍と差別」というテーマで講演をしてきた。

そこでも述べたのだが
戸籍法は、我々、法律家としては、大変不思議な法律である。
通常、法律は、その第1条にその法律の目的を書いているのが普通である。
例えば、何かの福祉政策を行うときに、それを実現するために
別途、何らかの「登録システム」を作る。
そのときの登録システムの法律の、冒頭第1条には何のための登録システムかという
法目的が書かれる。
これが普通である。

しかし、戸籍法にはその法的がない。
つまり、最初に、登録ありきなのである。
何かのために登録するのではなく、先に広く網をかけているのである。

そのくせ、戸籍情報は、本籍地、生年月日、結婚、離婚、子どもの有無など
高度なプライバシー情報を含んでいる。
そして戸籍情報を元にした、いわれ無き差別も後を絶たず
国籍差別、部落差別、非嫡出子差別その他枚挙にいとまがない。

結婚や就職に際してのいわゆる身元調査も後を絶たず
結婚差別や就職差別により、悲惨な結果を生じたことも少なくない。

戸籍そのものは、単に情報にすぎないとしても、
戸籍を手がかりにした差別が存する以上、差別を助長していることは間違いない。

しかも、本来、情報はその個人のものである。

無論、福祉目的に沿ってその実現の為の登録システムを作る必要があるなら
その福祉目的毎に登録システムを作ればよい。
現に諸外国は、そうである。

広く一般的に登録をするという日本の戸籍制度のようなシステムをもった国は無い。

ならば、差別を助長するに過ぎない「戸籍」自体が果たして本当に必要なのかどうか
基本的な議論がなされるべきであろう。

すでに存在しているから、必要性があると考えてはならない。
むしろ、その弊害とともに、真に必要なのかどうかこそ考えるべきであろう。

しかしだからといって長年馴染んだ戸籍制度をいきなり無くすのは
なかなか容易ではないだろう。
一方で、戸籍が差別を助長する。
そこで、近時、市区町村が取り入れている手法が「本人通知制度」である。

この「本人通知制度」とは、市区町村が、住民票の写しや戸籍謄本などを、
代理人や第三者に交付した場合に、希望する本人(事前に市区町村への登録が必要)に
交付したことを知らせる制度である。
この本人通知制度の目的は、
第三者の不正請求及び不正取得の防止(不正請求の早期発見につながり、個人情報の不正利用防止や事実関係の早期究明が期待できる)および
不正請求の抑止(不正が発覚する可能性が高まることから、不正請求を躊躇させる)にある。

ところがこの本人通知制度に対して、私が属する「日弁連」が反対している。
基本的人権を守る立場にある日弁連のこの態度は残念でならない。
日弁連曰く、強制執行の妨げになる、遺言書を密かに作れない、というのが理由である。

確かに、債務者に対する強制執行(相手の財産を裁判所を通じて差押えすること)を
するときに、裁判所に提出する戸籍謄本などを添付書類としてつける。
ことき債務者が、自分の戸籍を取られたことを知って強制執行を予測し、
財産隠しをすればどうなるのかというわけである。
この「本人通知制度」があるために、せっかくの強制執行が空振りに終わった、というのである。
しかし考えても見てほしい。
こんなのは、本人に知らせる時期をずらせばいいだけの話である。
それだけで、両者の利益(差別の防止と強制執行という権利の実現)は共に守れる。
何で、両方の利益を守ろうとしないのか不思議である。

日弁連のもう一つの理由は、遺言書を密かに作れない、というものである。
例えば、公正証書遺言を作ろうとして、公証人から、戸籍謄本を出すようにといわれ
提出した。
そのとき、例えば「本人通知制度」で戸籍を取られたことを知った子ども達の一人が、
「お父さん、何で、僕の戸籍取ったの」と聞かれて
これでは、こっそりと遺言書を作ることができない、というわけである。
しかし、これ、どう思います。
普通に、子どもに聞かれても「相続人を確認した」と最低限の事だけ説明すれば良いでしょう。
遺言の中身まで言う必要は無いのですから。
それが何で困るのでしょうか。
こんな「こっそりと遺言書をつくる」ことまで保護する必要はありますか。

日弁連の反対意見はとうてい理由に成っていないと思える。

【2014年11月19日追記】
東京の指宿昭一弁護士からの連絡に寄れば、村越進日弁連会長は
「本人通知制度に反対の立場でなく、職務上請求用紙の不正使用には日弁連としても憂慮している」と述べたという。
2009年8月7日付け日弁連申入書は「本人通知制度に反対していない」とは読みにくいが、日弁連会長が前述のような、意見を示したことは前進である。



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by kazuo_okawa | 2014-02-03 22:44 | 情報・プライバシー | Trackback | Comments(1)