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by kazuo_okawa

2014年 01月 09日 ( 2 )

今期A級順位戦で、谷川が渡辺に負けた。
渡辺5勝2敗、谷川1勝6敗である。

谷川の降級の可能性が一段と高まった。

渡辺は、かつて、谷川の棋譜を並べて勉強したそうだが
この二人には共通項がある。
二人とも、「中学生棋士」である。
中学生で将棋のプロ棋士になったのは
他には、加藤一二三九段と羽生善治3冠のわずか4人のみであり
まさしく「天才中の天才」である。

そして、この4人中、谷川と渡辺にはいわゆる同世代のライバルがいない。

羽生などは、森内竜王・名人をはじめとする「羽生世代」のライバルだらけであり
特に、羽生・森内が、小学生時代から約30年の時を経た今日でも
ライバル同士というのは驚異的ですらある。

ライバルの存在は互いに力を高め合い、
ある意味では大変心強い「戦友」であるとも言えよう。

ところが、谷川と渡辺には際だった同世代のライバルがいない。
谷川などは、「序盤のエジソン」田中寅彦九段がライバルと期待されたが
結局は長続きしなかった。

その谷川は、29歳の4冠王をピークにして、その第一人者の座を
羽生に譲り渡している。

渡辺は、今年30歳になる。
渡辺が、谷川同様に、29歳の3冠王の時が一番ピークだった、となりかねない。
無論、そのようなことがあってはならない。

ただ谷川の場合、地位を追いやった強敵は、下の世代(羽生世代)であったが
渡辺の場合は、森内名人に「竜王」を奪取された通り、相手は
上の世代(ここも羽生世代)であることだ。

1月12日から始まる渡辺対羽生の王将戦。

七大タイトルの中で王将戦は、歴史的には意義のあるタイトルであるが
現在では、主催社、賞金額などから、もっとも存在感の薄いタイトルである。
しかし、今期の渡辺対羽生の王将戦は別である。

渡辺は上の世代にこれ以上負けるわけにはいかないだろう。
一方、羽生は来たるべき「名人戦」へつなげるためにも負けられない。

この一局は、将来の将棋界に影響する実に大きな一局である。

この対局、どうなるのか。
実に楽しみである。
by kazuo_okawa | 2014-01-09 23:40 | 将棋 | Trackback | Comments(0)
「殺意の構図 探偵の依頼人」を読む。
作者の深木章子は元弁護士であり、
弁護士を廃業して作家に専念し書かれたミステリである。

ミステリとしては三転四転する作品である。
「どんでん返し」ミステリの好きな方には大変面白い作品であろう。
また作者は弁護士経験があるため、司法実務など
非常にリアルでその点も興味深い。

しかし、私自身が弁護士であるためか、些細な点ではあるが
どうしても気になる部分がある。
そこでこのブログでは、ミステリとしての作品の評価は別として
私が弁護士であることから気になった部分について触れる。

<以下、ネタバレしています>

それは、「接見交通権」に関することと、最後の事件の動機である。
とりわけ「接見交通権」に関する部分は、実は、読みながら
妙に気になっていた部分である。

接見交通権とは、憲法上認められた人権であり
平たく言えば、勾留されている被疑者・被告人が
立会人無しに、弁護人と会える権利である。
これが弁護人以外の者(例えば、家族)との面会なら、必ず、立会人がつく上
そもそも、面会自体が制限されることもある。
しかし、全ての人との面会が禁止されているときでも
被疑者・被告人は、資格を有する弁護人と立会い無くして会えるのである。
これは、被疑者・被告人の防御権を全うするために、専門家のアドバイスを
言わば「秘密」の状態で受けることを意味する。

以上を前提にして、私が気になった一つ目は、この弁護人接見を
当局が「20分」と制限する場面である。
物語の最初の方で出てくるので、これがいきなり引っ掛かる。

この制限は、作者が作中で詳しく解説しているとおり
いわゆる「接見指定」と呼ばれるもので
はっきり言って、「接見妨害」以外の何物でも無い。
20分では、とうてい、事情聴取、打ち合わせ、適切なアドバイスができないことは
誰しも想像がつくであろう。

私自身も、過去何回かこういう「接見指定」をうけたことはある。
こういう「接見指定」のあり方については、弁護士会あげて激しく問題にし
また数々の国家賠償請求訴訟などを起こして闘ってきた。

その経過は省くが、結論から言えば、裁判員裁判施行前の
2008年5月には、警察庁、最高検察庁が通達を出して、
接見の運用は大きく改善されたのである。

以降、最近では、検察庁特捜部事件などの特別な例外を除き
接見時間の制限という事例はほとんど報告されていない。

つまり、「殺意の構図 探偵の依頼人」に出てくる「接見時間20分」の運用は、
現時点では、よほどの例外の場合しかありえず、従って、本作のような運用が
されているのは、実は2008年5月以前のことなのである。

私は、ここを読んだとき、本作は、事件発生日時にトリックがあり
その伏線か、と思ったくらいである。
(無論よく考えれば、そんな専門的なことが伏線になるはずはないし
またそもそも作品を読み進んでいけば、裁判員裁判であることがわかり
つまり、運用改善後であることがわかるのである。
どうやら作者は2007年に弁護士を辞めておられるようなので
そのため最近の運用は経験しておられなかったものと思われる)

その点はさておき、私は、どうにもこの点が引っ掛かったのである。

しかしこの部分は、ミステリとしての作品に影響しない。
従って、ある意味では、どうでもいいことだとは言えるだろう。
しかし、元弁護士の作品ゆえ、読者が、現在もそうだと誤解される危険はある。

もう一つは、「朱実殺し」の真相に関係する。

ミステリの手法の一つに「間接正犯」トリックがある。
間接正犯とは,Aが,Bを利用して,Cを殺そうとするとき
Aは直接,Cに手を下してはおらず、
間接的であるため、このAを間接正犯と呼ぶ。
例を挙げれば,AがBに「この薬をCに飲ませてちょうだい」と頼み
Bが,Cに薬を飲ませたところ、実は、その薬は毒薬であったためCが死んだ、
というような例である。
Bは、全く「人形」として利用されただけであり、法的には責任は問われない。

ミステリの世界に話を戻せば、このBが意表を突く人物であればあるほど
Aが真犯人と見抜くのは難しく、そして、一方、謎解き場面の意外性は
一挙に増すのである。
(ここまで書けば、とある有名作家の名作を思い浮かべる方もいるだろう)

さて本作である。
実は本作では、そのBは、何と!主役級の弁護士なのである。
これは非常に面白い発想である。
おそらく多くの方の意表を突いたことであろう。

しかし、この点も、私が弁護士であるが故に
どうにも気になるのである。
前述の通り、接見交通権は、誰の立会いも無くして
弁護人と会える権利である。

ではそのときに、被疑者・被告人は、弁護人に違法なことを頼んだりしないのか。
立会いの無いのをよいことに違法な相談はしないのか。
無論そういうこともあるかもしれない。
しかし、弁護人は、被疑者・被告人の正当な権利の擁護者であって
違法なことには決して荷担しない。
弁護士倫理として、厳しく戒められているのである。
それは、「証拠の包丁を隠蔽してくれ」などという直接的な要望に応えられないのみならず、「女房に『天井裏の紙袋を、社長に渡してほしい』と伝えてください」というような
怪しい伝言も伝えられない。

弁護人はそこで「スクリーニング」する訳である。

こういうスクリーニングは弁護人として、当然、行うべきであるが
本作では、弁護人がスクリーニングしている様子が全く見えない。
弁護士倫理の規制を受ける弁護士としてはこれはどうなのか、と
読みながらどうしても気になるのである。

そして、ラスト。
実はこの弁護士が殺人を犯す。
あっと驚く場面である。
しかし、その動機はどうなのか。
依頼者に騙される弁護士は少なくない。
どの弁護士でも多かれ少なかれそういう経験はしているであろう。
そうであれば、弁護士たる者がこのような動機で殺人を起こすか、というのが
最後の疑問である。

もっとも以上の点は、私が弁護士だから感じたところであろう。
どうぞ気にせずに読んでいただきたい。
冒頭に述べたとおり、ミステリとしては三転四転して大変面白い。

とはいえ、実務に詳しく、実務と違う記載のあるミステリに対して
よく批判されていた今は亡き佐野洋氏が存命なら
どのように語られたか聞いてみたい気もする。
by kazuo_okawa | 2014-01-09 02:19 | ミステリ | Trackback | Comments(3)