豊島将之竜王が竜王位を防衛した。
実力があり、タイトル奪取を重ねながら、防衛が出来ないのが不思議だったが、ようやく本来の力通りに発揮したということだろう。
木村一基九段や、渡辺明三冠との闘いはどうしても、一度は相手に勝たせたいという空気があり、ある種のアウェー感の中での闘いだった。
そして今期竜王戦。
豊島ファンからすれば、羽生善治九段との竜王戦は面白かった。
相居飛車の代表的4つの戦型を一度ずつ用いて闘い、この第5局は羽生九段が二度目の矢倉を選択し、そしてこのシリーズでその形で勝利している豊島竜王が手を変える。
AIの評価値もよく分からず、挟撃体制を作ったとき素人目には豊島竜王が良いのかと思ったが、まだ羽生九段が優位らしく、その羽生九段が普通に思える2筋から攻撃していったのがAI的には逆転という。
視聴者は、そのAI評価が見えるから、これからの将棋解説者は、その意味を瞬時に、そしてわかりやすく説明する能力が要求される。
逆転した豊島竜王。
ファンなら承知の慎重な確認作業を、全く表情を変えない中で、ごくわずかに頷き、そして胸元に手をやって、「勝利」である。
ストイックで勉強家、誰しも驚く自己を律する勉強部屋の鏡。
勝利しながら、「(他のタイトルホルダーに比べて)危機感を持っている。他のタイトルホルダーについていきたい」という。
謙虚さも魅力である。