いやあ面白い一局であった。
豊島将之王位(名人)に木村一基九段が挑戦する60期王位戦。
2勝2敗で迎えた第5局。
豊島王位はもともとオールラウンダーであるが、タイトル奪取の武器であった「角換り」はこのシリーズでは出さず、それどころか、2連勝後の第3局では、近時不利と言われる先手矢倉を採用した。
矢倉は木村九段の十八番でもある。
この戦法採用に私は、豊島将棋の王者の歩みを見た。
豊島王位は、かつては「序盤、中盤、終盤隙が無い」、そして進化して「隙あらば大胆に仕掛ける」。
今、それに加えて「受けて立つ」王者の歩みと思ったものである。
しかし2連敗。
そしてこの第5局。
豊島王位は、ついに伝家の宝刀「角換わり」を採用し、そして、封じ手場面では歩の突き捨てという手(木村九段がとる一手しかない)を封じ、そして、一晩その次の手を考えるという戦術を採用している。
この第5局は何が何でも勝ちに行ったと言えるだろう。
そして見事に勝利。
これで、防衛に大きく近づいたのは間違いない。
【追記】
ニコ生タイムシフトで、終盤と感想戦を聞いたが、解説者真田圭一八段、そして豊島王位ともども68金の一手(AIは評価しなかった手)が豊島王位勝利へのポイントとなったというのであるから面白い。つまり、ソフト的にはマイナスの手が、人間的にはプラスというのが面白い。
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