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by kazuo_okawa
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改めて民法改正と賃金債権の時効

民法改正により賃金債権の時効をどうするかが議論になっているが、当然民法に合わせるべしと、私は繰り替えしこれまで述べてきた。

一方、厚労省は2020年施行を念頭に置いて、有識者検討会を開いて検討している。
その「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」議事録が厚労省ホームページに公開されている。
第2回・第3回は関係団体等からのヒアリングが行われ、とりわけ、第2回は、労働側弁護士と経営側弁護士で意見が真っ向からぶつかっている。

経営側の伊藤昌毅弁護士は「民法(債権法)の改正によって民法の時効制度が改正され、短期消滅時効 (これには、民法 174 条 1 号の使用人の給料債権の 1 年の時効が含まれる) が廃止され、一般債権の消滅時効(権利行使できることを知ったときから 5 年間、権利行使できるときから 10 年間)に 1 本化されたから、労働基準法 (以下、労基法)115 条の時効(賃金等は 2 年間、退職手当は 5 年間)を見直し改正後の民法の時効に合わせるべきとの議論は、労基法が刑罰(取締) 法規であることを理解しない短絡的謬論である。」と激しい口調である。

「短絡的謬論』との決めつけに驚くが、そのこと自体が「短絡的謬論」だろう。
無論、刑罰の点だけ民法とは変えるという手法はありうるが、だからと言って、そもそもの時効自体を一般法の民法より短くするというのは論理の跳躍であり、その発想にはとうていついていけない。

伊藤弁護士は他の理由もあげるが、所詮使用者側の都合にすぎない。

また刑罰の点であるが、この点だけ、労働法、民法と変えるという手法はありうるのであるから、激しい口調の伊藤弁護士説は何ら根拠とならない。。

現に今、使用者の都合で働けなくなった労働者の賃金はどうなるのかという点では、一般に次のように考えられている。
A 民法第536条第2項は次のように規定する。
「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」
難しく書いていますが「債権者」とは使用者のこと、「債務者」とは労働者のことと読み替えてください。
一方、労働法は次のとおりである。
B.労働法第26条
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」
さてこの両者の関係をどう考えるか。
実は、通説は、A、B両者の関係について、「両者は併存する」と考えられている。
つまり、60%の支払については、Bは罰則を持って強制しているというわけである。

このように、基本は民法によりつつも、刑罰は別異に解する、というのは手法としてありうるのである。
従って、労働法は刑罰法規であるからという伊藤弁護士の主張は(刑罰の点は民法と別とるするとしても)時効そのものを民法と別にする理由にはならない。

まあ、伊藤弁護士の論考を見る限り、賃金債権の時効は、民法に依拠して5年とすべきと思われる。

【追記】
本稿は、刑罰と民事上の義務は別にしても構わないから、刑罰を理由とする使用者の論理はおかしいと指摘したところに主眼があり、<2年分の未払より、5年分の未払の方が悪質だろうから>刑罰も、時効5年に連動させておかしくないと思っている。

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by kazuo_okawa | 2018-04-25 00:21 | 労働 | Trackback | Comments(0)