未払い賃金、時効見直す?
2018年 02月 26日
2月26日の朝日新聞記事によれば、
表題の見出しとともに、「未払い残業代などを社員が会社に請求できるのは「過去2年分」までとする労働基準法の規定の見直しに向けた議論が、厚生労働省の有識者検討会で本格化している。労働側の弁護士が「5年にするべきだ」と求める一方、経営側の弁護士は「変える必要はない」。主張は真っ向からぶつかっている。」という記事が出ている。
これだけでは何のことかわからないかもしれない。
実は、現行民法の賃金債権の時効は「1年」であるところ、労働者保護のために労働基準法が「2年」とした。
そこで現状は、賃金債権の時効は「2年」である。
ところが昨年、120年ぶりといわれる民法改正が行われた。
そして、そこでは、賃金債権も含めて時効は「5年」とされたのである。
民法は一般法であり、基本法であり、当然労働法上の賃金債権も「5年」となるべきところであるが、今なお、厚労省検討会で議論しているというのである。
この問題は私は「法友」2013年6月号他、何度も繰り返し指摘している。
当然に、民法と同じにならないとおかしいと…。
そもそも今回の「民法改正」を主導してこられた内田貴東大名誉教授にも私は直接確認している。
教授も「当然、民法と同じになります」と明言された。
法律の世界には「後法優先」という原則がある。
民法改正の時効の議論で、今回一般法として「5年」としたのだから、労働法もそうなるべきである。
そもそも「賃金」は、労働者を働かせている以上、使用者が支払うべきものであり、その「未払」自体が許されるものではない。
それを何年も放置すること自体もひどい話である。
賃金債権だけ、時効を「2年」とすることは、そのひどい「未払」を許すことになり、議論の余地はない。
120年前の民法制定時とは異なり、今日では、タイムカードやパソコンでの仕事の履歴などで労働時間は容易にわかる。
労働者が働いていればその賃金を支払うというのは当たり前の話である。
にもかかわらず使用者側は5年にすることに強く反対している。
財界はアベノミクスにより、空前の収益をあげておきながら、本来払うべき賃金を払いたくない、としか思えないこの態度は強く非難されてしかるべきだろう。
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