宿野かほる『ルビンの壺が割れた』を読んだのだが…。
2017年 08月 31日
宿野かほる『ルビンの壺が割れた』を読んだ。
見事に騙されました。
新潮の宣伝戦略に…。
帰路、梅田紀伊国屋書店に寄ると大量に本書が積まれている。
「この小説、凄すぎてコピーが書けません。」というコピーである。
そして「ネタバレ厳禁!」とある。
こうなればどんなに凄いミステリかと思いますね。
ネット上でも話題騒然だったらしい。
何せ題名は『ルビンの壺が割れた』。
有名な錯視画像「ルビンの壺」が割れるというのですから、叙述トリックが二転三転するのかな、と普通に思いますよね。
(それゆえ「書き手」その他いろいろと疑いながら読んでいく…)
そして読了!
なんというんでしょうか。
本書は、広義のミステリではありますが、本格ミステリではありません。
しかしね、ネタバレ厳禁!とあれば本格派かと思うではないですか。
要するに本書は、私の好きな作家のひとりである有栖川有栖氏の言葉を借りると「秘密明かし作」にすぎないのです。
つまり、本来本格ミステリは「謎を解く」ものであるはずのところ、最近あまりにも「秘密が明かされていくだけ」の作品が多いことへの嘆きである。
改めて言うまでもないが、本格ミステリは「発端の興味深い謎」が合理的に解き明かされて、そして意外な真相に至るというのがその醍醐味である。
にもかかわらずただ単に、秘密が明かされていくだけのミステリが多すぎる!
これが、有栖川氏の嘆きであり、古くからの本格ファンとして全く同感である。
そして本書は、本格ミステリではなくその「秘密明かし作」なのである。
こういう作品は本質的に驚くことはないんですね。
しかも身構えて読んでいるためか、本書の落ちも、ある程度予想される。
いやあ、見事にコピーに騙されました。
コピーの中の「一時間で読める」というのだけは本当です。
すらすらとすぐに読めます。
本格ファンではなくて、「秘密明かし作」ファンにはお勧めでしょう。
それにしても、こういう読みやすい「秘密明かし作」が売れるんですね…。
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