渡辺明棋王、粘る佐藤天彦を倒す!
2016年 03月 06日
これで渡辺の2勝1敗であり、防衛に王手である。
戦型は後手番渡辺がゴキゲン中飛車、佐藤が超速である。
4筋に、歩越しで銀が向かい合う形になる。
そして相穴熊。
日曜日の一日、ニコニコ動画が完全生中継をしてくれたのが嬉しい。
阿久津主税八段の解説がうまい。
例えば、相穴熊は終盤の距離感(玉を詰ますまでの手数)が読みやすく、逆転は難しい、それゆえ序盤に慎重になる。
51手目、佐藤が45に銀をぶつけたとき、渡辺が44の銀を53へと交わす。
佐藤が進出した銀で34の歩を無条件でとれるのだが、これは戦場から遠ざかる。
それで良しと考えるプロの発想が勉強になる。
序盤はわずかに佐藤が優勢だったが、中盤、渡辺が逆転した。
その優勢さを渡辺はずっと維持する。
阿久津は何度も「後手(渡辺)の勝ち」と解説し続けるのだが、佐藤はねばり強く、怪しげな手を放つ。
それをきちんと的確に攻める渡辺の秘術を、阿久津の見事な解説が盛り上げる。
見ていて疲れる迫力ある対局であった。
終わってからの感想戦もいい。
感想を聞いていると、敗れた佐藤は、有利と言われているときもそんなに楽観していないようであり(ちょっと良いかな、くらい)、また、立会人田中寅彦の「不利」の指摘に、えっ、という表情をしていたように悲観もしていない。
楽観もせず、悲観もせず。
ここに佐藤天彦の強さがあるのだろう。
一見良いように見えても楽観しない。
一見悪いように見えても悲観しない。
何やら、人生の処し方に通じそうな姿勢である。
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