「法廷侮辱」をしている人は誰でしょう?
2015年 10月 15日
多くのミステリは大抵気にならないが、時折出てくるのが「法廷侮辱」或いは「法廷侮辱罪」である。
日本にはそういう犯罪はない。
にもかかわらずこういう用語が出てくるのは、明らかに英米のミステリの影響である。
無論、日本でも類似の制度はある。
それは「法廷等の秩序維持に関する法律」であり、
裁判官の面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は一定の制裁を受けることになっている。
しかしこれは一般に、法廷侮辱罪とは言わない。
最近読んだミステリにも「法廷侮辱」の言葉が出ていたが、仮に、「法廷等の秩序維持に関する法律」のことを法廷侮辱というと善意に理解したとしても、その著の中では、
「裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動」の場面でないから、やはり本法にも当たらない。
どうやら、広く、裁判官の気分を害するような行為を「法廷侮辱」と呼んでいるようである。
ひょっとすれば、そういう誤りを多くの人が共有しているのかもしれないが、無論、誤りである。
本質的には、アメリカの影響、という点を問題とすべきなのであろう…。
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