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by kazuo_okawa
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呉勝治「道徳の時間」に考える

乱歩賞作品は一般に大きなはずれはなく、どれもまあまあ読ませる上、時には大変面白い作品もある。
しかも、毎年、夏休みに刊行されるので、ミステリファンとしてはこの時期楽しみの一つである。

第61回乱歩賞は「道徳の時間」。
早速購入して読了した。
しかし、ブログに挙げるにはやや逡巡したのだが…。

【以下、少しだけ「道徳の時間」のネタバレをしていますのでご注意下さい】

過去の事件と現在の事件が交錯するというのはミステリの手法の一つで、本作もその手法である。
謎が幾つも設定され、ドキュメンタリー映画の撮影という手法をとり関係者にインタビューを重ねながら「真相に迫る」というのが目新しくて面白い。
主役伏見が、映画観の違いなどで越智とぶつかり合って、カメラ撮影の仕事を辞めると何度も引き上げかけるのもストーリー展開上工夫されている。
また越智の正体というサプライズエンディングも良い。
こういうのは好きである。

しかし何より引っ掛かるのは、過去の事件の犯人の動機である。
この動機を最大の謎としてあれだけ引っ張ってきたのですからね。

この著を読んで思い出すのが、実在の神戸の事件。
少年Aが出版した「絶歌」について、その出版の是非の議論を呼んだことはつい最近の話である。
「道徳の時間」はまあこの「絶歌」を例に取ってみれば、最初からそのベストセラーを目指して殺人を犯したというもので、どこから考えても現実性がない。

…とまあ、こんなことを思うのは、私が、法律実務家だからかも知れないが。

もう一つ、思い出すのが、東京オリンピックのエンブレム問題である。
佐野研二郎氏の盗作疑惑から、彼が辞退することになったが、この間判明したのは、選ばれたのは当初の佐野氏の公募作品でなかったことだ。
修正した作品が問題になったエンブレムだったわけであるが、公募作品を「修正」させるというのはおかしいのではないかとの疑惑である。

本書も修正させたとある。
大きく修正させたなら、果たしてそれは問題ないのか。
おもわず、東京オリンピックのエンブレム問題を思い起こさせる。

本の帯には大きく「問題。一番悪い人は、誰でしょう?」とある。

答えは、「出版社である」と言いたくなる…。
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by kazuo_okawa | 2015-09-02 22:57 | ミステリ | Trackback | Comments(0)