衝撃の二歩と将棋コンピュータ・ソフト
2015年 03月 12日
トップ棋士同士の公式戦で、しかも、準決勝という大一番で反則負けが生ずるというのは極めて珍しい。
早速、ユーチューブで取り上げられ、ヤフーニュースでもトップに並ぶほどの大きな話題となったのはそれだけニュース性があったからだろう。
優勝を狙っていたにもかかわらず、反則負けという言わば不名誉な負けをした橋本八段はあまりの衝撃にその日どうやって帰ったかわからず、気付いたら自宅ソファにぽつんと座っていたという。
一方の、勝った行方尚史八段も、その瞬間頭をかかえて驚いている。
それくらいの衝撃的なことが起こったということだ。
と同時に、一瞬のミスが奈落の底に落ちるという、人生の悲哀もみてしまう。
ときあたかも、3月14日からコンピュータ・ソフト対棋士の将棋電王戦が始まる直前の出来事である。
電王戦は今から大変楽しみな企画であるが、言うまでもなくコンピュータ・ソフトは二歩を絶対にしない。
そうならないように作られているからである。
その意味ではポカも出る、反則も出るというのは、コンピュータ・ソフトにはない人間同士の闘いだからこそともいえる。
かつて、高野山の決戦で必勝の将棋を落とした升田が「錯覚いけない、よく見るよろし」と思わずつぶやいた升田のポカ。
中原名人を追いつめ「名人」をほぼ手中にしながら逃した大内延介のミス。
これらは当事者にとっては大きなミスだが今や伝説となっているエピソードである。
人間同士の闘いだからこそ、良くも悪くも、その意表をつく意外性に、人は人生をかいま見て感動する。
電王戦を前にして、衝撃の二歩に色々と考えさせられる。