痴漢冤罪事件の恐怖
2015年 02月 07日
その一つ、三鷹バス痴漢冤罪事件を紹介する。
その元被告人T氏は中学教師をしている。
夕刻に、三鷹バスで移動中、左手でつり革を持ち、右手で携帯で(彼女と)メールをしていたのに、女子高生の証言で痴漢に間違われ、バスから降りた後、そのまま警察に引き出されて逮捕され、28日間も拘束されている。
それだけでもひどいが、T氏は一貫して否認していたのに、何と驚くべき事に一審判決は有罪となったのである。
この事件では、バスに車内を映す車載カメラがあった。
その車載カメラに元被告人は映っている。
しかも、T氏の供述通り、T氏の左手はつり革、右手は携帯だったのである。
痴漢の様子は何処にもない。
では何故これで有罪になるのか。
女子高生証言を無批判に信用しているためである。
実は車載カメラは、バスが揺れたために、T氏の左手が一瞬カメラから消える場面がある。
一審判決はそこをとらえて「バスが揺れている状況の中で、右手で携帯電話を操作しながら、左手で痴漢行為をすることは容易とはいえないけれども、それが不可能とか著しく困難とまではいえない」という。
何という理由なのか。
始めに予断ありきであり、明らかに「立証責任」が逆転しているとしか思えない判決である。
そもそもデート前に彼女とメールしている男性が、一瞬の、バスの揺れの間に「痴漢」することなどありうるのだろうか。
幸いにもこの事件は高裁で無罪になったが(平成26年7月15日東京高裁で逆転無罪)、そこまでにT氏の失ったものはあまりにも大きい。
T氏の話で印象に残ったのは2つある。
一つは、捜査側は、T氏の無罪を示す車載ビデオをT氏側になかなか見せず、一方で捜査官は平気で嘘をつくということである。
捜査官は、T氏に「自白」をとるために、「いつまでも否認していても、ビデオに映っているんだ。また目撃者は一杯いる」と迫ったが、ビデオには前述の通り痴漢場面は何処にも映っておらず、また目撃者もいない。
つまり嘘をついて「自白」を迫ったのである。
こんな取り調べは到底許されないだろう。
もう一つは、T氏は、誰でも「冤罪」にされる、とその恐怖を訴える。
両手を挙げていても「痴漢」にされる。
離れていても「痴漢」にされる。
そして、車載ビデオに映っていなくても「痴漢」にされる、と体験を通じて訴えられる。
「冤罪」は最大の人権侵害である。

