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by kazuo_okawa

GPS捜査は許されるのか

1月28日のニュースによれば、住所不定無職(36歳)の被疑者の窃盗被告事件において、被疑者の車などにGPS端末を付けて行動を監視したことについて、弁護人が「プライバシーの侵害に当たり違法だ」と主張していた裁判で、大阪地方裁判所の長井秀典裁判長は「使用されたGPS端末は24時間、位置情報が取得され記録されるものではなく、地図上の表示も、数百メートル程度の誤差が生じることがあった。捜査員は、尾行の補助として位置情報を使用し、記録として蓄積していたわけではなく、プライバシーの侵害の程度は大きくない」として、違法ではないという判断を示した、という。

あくまでニュース報道であり、判決文そのものを読んでいないが、刑事裁判の中での判断であるから、おそらく窃盗を裏付ける「証拠」に対して、弁護人が違法収集証拠であるとして証拠排除(違法に収集した「証拠」は、裁判の証拠とすべきでない)の主張をしたことに対して、裁判所が「違法として証拠排除することはしない」と判断したものと思われる。

違法収集証拠排除原則とは、憲法・刑事訴訟法から導かれる原則であり、平たく言えば、捜査官が違法に収集した「証拠」は、そんな違法を許さないためにも、裁判の証拠に使ってはいけない、というものである。

例えば、拷問で被疑者の「自白」をとっても、そんな「自白」証拠は、違法に収集されたものですから、裁判の証拠にしてはいけない(仮に、その人物が真犯人としても)いう原則ですね。
拷問のような、違法な証拠収集を許さないためにも、これは当然の原則である。

さて、そういう原則がありながら、我が国の刑事裁判では、その「証拠収集証拠排除原則」は極めて緩やかに運用されているのが実状である。
これも平たくいえば、少々の「違法」は目をつむる、ということである。
つまり、「違法の程度」が低ければ、そういう「収集証拠」も許して、それを、裁判の証拠としてよいとしてきたのであり、この長井判決もその流れである。

その長井判決もGPS捜査がプライバシー権侵害とは認めている。
当然である。
GPS捜査は、監視カメラ以上に、「特定個人」を対象にしているのである。
仮に、監視カメラ同様一定の場合には認められる(いわゆる大阪地裁5要件説)という立場に立つとしても、GPS捜査は、監視カメラ以上により厳しく制約されるべきであろう。

にもかかわらず長井判決のような結論がでるのは、おそらくここには、「悪い被疑者」を許してはならない、という価値観の方が上まっているのだろう。

しかし、どんな場合でも、指弾する側は「クリーンハンド」でなければならない。
まして、刑罰という強固な力を発動する「国家」は尚更「クリーンハンド」でなければならない。

加えて、前述の通り、「GPS捜査」は、監視カメラ以上に、対象個人を特定しており、いわば、その人の「行動」を監視しているのであるから、これほどひどいプライバシー権侵害はない。
判決も「プライバシー権」を侵害していることは認めている。
しかしそれでいながら、その程度が「大きくない」から許される、とされたのではたまらない。

GPS捜査について、それが必要なら、何らかの法規制が必要である。
そして、そういう法規制がいまだない現状では、GPS捜査は許されない、と考えるべきである。

私はこの長井判決に納得しえないが、万が一、この判決を容認する立場に立っても、判決の読み方を間違ってはならない。
即ち、判決は、GPS捜査を「あくまで尾行の補助」としていること、「今回のGPS捜査の性能の悪いこと」を指摘した上での結論であることに注目すべきである。
長井判決も、こういう条件のもとに、違法でない、としたのである。

ゆめゆめ、一般的に「GPS捜査」が許されるとしたわけではない。

少なくともこのことは大きく強調すべきであろう。
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by kazuo_okawa | 2015-01-28 23:58 | 情報・プライバシー | Trackback | Comments(0)