米澤穂信「満願」を読む
2014年 12月 12日
ベストワンに選ばれるだけあって大した作品である。
短編集であるが、そのどれもが面白い。
【以下、ネタバレしています】
冒頭の作品は「夜景」。
ラストに見事に引っかけられた。
爽快である。
トリック自体は、チェスタトンの「木の葉は森に隠せ」である。
無論、単純に状況を変えれば、ミステリが作れる、というものではない。
米澤は、その「森」をいきなり出すのではなく、その「森」の疑問へ導くために、同僚刑事と兄の存在を巧みに配置して、やがて「森」の謎とその意外な真相へと一気に導く。
この、ストーリテリングはまさしくプロである。
と同時に、トリックは同じでも工夫次第で意外なミステリは尽きない、というミステリの未来に向けての可能性も示唆している。
冒頭作にふさわしい。
そしてラストは表題作。
その、殺人の「動機」を読んだとき、率直に驚いたものである。
よくもまあこんな事を思いついたものである。
「結末の意外性」は大好きなので、これも表題作にふさわしい。
三冠王にふさわしい見事な名作である。