「しあわせの書」「生者と死者」の復刊!
2014年 02月 12日
代表的な書でありながら、長らく絶版になっていた書物である。
同氏のデビュー以来のファンとしては大変嬉しい。
しかし、その反面、いささか複雑な思いもある。
<以下、若干のネタバレと、マジックのある手法に触れています。>
「しあわせの書」は無論優れたミステリであるが
実はこの文庫本自体が、これでマジックが出来る仕掛けに成っている。
その仕掛けは、この本を購入して真相を知って、本を手にすればたちどころに分かるが、それにしても、よくもまあこんな本(仕掛け)を作り上げたものだと感心する。
鬼才泡坂妻夫に拍手喝采するしかない。
しかしながら、正直なところこういう仕掛けはあまり知られてほしくない。
これが、複雑な思いである。
この書を購入される方は同好の士として共に楽しく語り合いたいが
書店の「立ち読み」で仕掛けだけ知る輩が出ることが困るのである。
我が国では、あまりにも、アイデア、仕掛けに対する評価が低すぎる。
皆さん、ゆめゆめ立ち読みで、アイデアだけを読み取るなどということはしないで
関心ある方は是非購入して下さいね。
もう一方の「生者と死者」も驚愕である。
これは「消える短編小説」入ってます!の表紙の謳い文句の通り、袋とじ製本のまま読むと普通に短編小説なのが、この袋とじを切り開いて読むと長編小説となり、短編小説は消えてしまうという、とんでもない小説なのである。
短編小説部分は、長編小説部分とも重なるのであるが、この長編小説部分と
短編小説部分は全くストーリーは異なるのである。
ここが凄い。
これは、ある部分に「二重の意味」を持たせているからこそ成り立つ仕掛けなのであるが
これほどの共通部分に「二重の意味」を持たせるというのは、これまた驚きとしかいいようがない。
古くからのミステリファンはご存知であろうが
泡坂妻夫のデビュー作「11枚のとらんぷ」は「袋とじ」であった。
(本を購入した読者が袋とじを切り開くという、当時の斬新な試みに驚いたものである)
おそらく、泡坂妻夫はこのデビュー以来どこかで、この「構想」を思いついたに違いない。
しかし、それが実現するまでの長さをみれば、それだけでも、この仕掛けの偉大さが分かるであろう。
もしも皆さんが(ミステリ好き、マジック好きで)
この「しあわせの書」「生者と死者」をお持ちでないなら、是非お薦めする。
そして「生者と死者」は、袋とじを切った後、短編小説をもう一度再読したいと思ったときに困るので(私自身の経験です)、そのときの為に、短編再読用としてもう一冊購入しておくのがいい。
また、「しあわせの書」も、あなたがこの本を使ってマジックをするならこれも2冊買うことをお薦めする。2冊の内、1冊は中身は同じながら表紙カバーだけ入れ替えておけば、2冊の内、1冊を選ばせる方法でこのマジックにつなげることも出来るし、「フォースの手法」で、4~5冊の内から1冊選ばせるいう手法など、色々と楽しめるからである。
ミステリファンにして更にマジック好きなら「しあわせの書」「生者と死者」は必携の2冊であろう。
(いや4冊か!)
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