第32期竜王戦、広瀬章人竜王に挑戦するのは豊島将之名人。
竜王対名人の最高位同士の対決である。
その七番勝負の第1局が11日、12日と行われ挑戦者豊島名人が173手で先勝した。
角換わりの戦型で、一日目、わずか1時間半経過の時点で、50手目まで進んでおり、驚いたものである。
序盤は飛ばすというのが豊島流であり、深い研究に裏打ちされている。
先手番豊島名人が、46に自陣角を配置し、24桂馬と相手の歩頭に放った時は、痛快な勝負手に見えたが、実際はこの手がやりすぎのようであった。
ニコ生のタイムシフトで調べるとソフトは、この65手目の24桂馬で逆転と示した。
現に終局後のインタビューで豊島名人は「桂馬打ってさえない。」「空振りしたかな。」などと述べてここから悪くしたと述べている。
しかし将棋は逆転のゲーム。
だから面白い。
終盤、広瀬竜王の攻めに、豊島玉は左辺から右辺に逃げる。
名人を応援している身としてはハラハラする場面である。
そして豊島名人は攻めては挟撃体制を作り、151手目に広瀬玉に詰めろをかける。
攻めのターンが交代し、今度は、広瀬竜王が豊島玉を詰ますことが出来るかという、将棋の一番面白い場面を迎える。
いわゆる「詰むや詰まざるや」である。
実にスリリングであり、一つ間違えば詰まされるところ豊島名人はきわどく逃げ切って勝利した。
いやあ、こういう将棋は実に面白い。
今期竜王戦、楽しみである。
【追記】
10月12日付毎日新聞夕刊に、競馬好きの渡辺明三冠がこの竜王戦の見所を「豊島名人が先行逃げ切りを目指すのに対して広瀬竜王の追い込みが届くかどうか」と競馬用語を使って説明しているが、確かに最終20手くらいは、まさにこの「追い込み」対「逃げ切り」の迫力でしたね。
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