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by kazuo_okawa
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斉藤美奈子「文庫解説ワンダーランド」

斉藤美奈子の新作である。
斉藤の作品はどれも面白く、私はほとんどの作品を読破しているが、本書も面白かった。

内容は、冒頭作を例にとれば「坊っちゃん」
言わずと知れた、漱石の代表作。
斉藤は、この各社から出ているその文庫の解説を片端からよみ、そしてそれを解説するのである。
それゆえ、文庫解説ワンダーランド!
「坊っちゃん」は青春痛快小説だろうと思っていたのが、各社の文庫解説によれば「悲劇」でああるとの解説もあり、斉藤に言わせれば、実は解説にも攻防戦があるという。
意外な視点で驚かされる。

次いで「走れメロス」
誰もが知っているお馴染みの作品である。
短編ゆえこの作品のみならず、文庫には、太宰の複数の作品が並べられているが、どの出版社も作品集の題名は「走れメロス」であり、表紙は(メロスの)「走っている」絵だという。
つまり、太宰の作品集の主役は「走れメロス」
ところが、何と、どの出版社の解説人もメロスへの言及はないという。
いやあ、文庫解説を読み比べた斉藤ならではの指摘であり、実に痛快、且つ面白い。

この調子で、どんどん斬りまくる。

中盤、庄司薫、柴田翔、小林秀雄なども実に興味深い。
何せ、青春時代の原点ですからね。思わず、書庫から、これら作品を引っ張り出してこようかと思ったくらいである。

そして何とミステリ編!
ミステリファンの私としては一番感心した。
斉藤は、ミステリの解説の掟は犯人を指摘してはいけないと、書きつつ、トリックの傷をくさした評論を挙げるのである。

いやあ、実に意表を突く指摘である。

その対象作品は「点と戦」!
傷を指摘した解説者は有栖川有栖!
この組み合わせは凄い!
「点と線」はどこかにあったはずだが、これは是非文春文庫版を買わねばならない。

とまあ斉藤美奈子「文庫解説ワンダーランド」は実に面白い本である。
ともあれこれだけ辛口で斬りまくっていたら、斉藤美奈子自身の文庫の解説は誰が書くの?と誰しも思いますよね。
実は「文庫解説ワンダーランド」の最後には、きちんとその点に触れて終わっている。

斉藤美奈子恐るべしである。

【追記】
さっそく有栖川有栖解説の文春文庫版「点と戦」を購入する!
いやあさすが有栖川有栖である。
解説を読む為だけに買ったのだが、値打ちがある。
ミステリの解説はこうでなくてはならない。



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by kazuo_okawa | 2017-02-04 20:47 | 本・書物 | Trackback | Comments(0)