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by kazuo_okawa
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佐藤康光「長考力」(幻冬舎新書)を読む

羽生世代の実力者、佐藤康光九段の新著である。
副題が、「1000手先を読む技術」とある。

彼のニックネームとして「1億3手読む男」、といわれただけに佐藤康光にふさわしい副題である。
何故、「1億3手」と中途半端な数字なのか。
将棋の基本は「3手の読み」である。
つまり、自分がこう指したとき(1手目)、相手はこうくる(2手目)、するとこうしよう(3手目)、つまり、相手の立場を読んで指すのが将棋の基本である。

相手の立場を考えることが、将棋以外でも人間社会では重要だと喝破された裁判官もいる。

そこで誰よりも深く読むと言われた佐藤康光は、相手が1億手読んだら更に3手読むとして付けられたニックネームである。

それにしても題名の「長考力」
棋士の書物には何故か「何とか力」が多い。

手元にある書物をみると谷川浩司会長の「集中力」。
ちなみにこの著第二部の各章題が、集中力、思考力、記憶力、気力となっている。
まあ、これだけあれば全ての闘いに勝つだろう。
最強王者羽生名人も凄い。
人気もあるため羽生名人はこの種の書物は何冊も発行しているが、その表題は「決断力」「直感力」そして「40歳からの適応力」である。
そして羽生のライバル森内俊之九段は「覆す力」である。
何なのでしょうかね。

ちなみに羽生名人は、その後「大局観」を出し、渡辺明竜王は「勝負心」とやや違うが、漢字3文字である。

横道にそれたが、さて、佐藤の「長考力」はさきの他の棋士とは趣きが違う。

棋士のこの種の新書本は人生の指南書として読まれることが多い。

どの世界でも一流の人の書いた著は、他の分野でも役立つ。
羽生名人の著は、明らかにそれを意識した著が多い。
それゆえ、将棋に詳しくなくても読める。
いや、むしろ将棋そのものに詳しくなくても読めるように工夫しているのである。

具体的には、(将棋の指南書と違って)将棋の棋譜や盤面図は出てこない。
現に、前述の羽生らの著は全て出ていない。
それは、ひろく将棋を知らない人にも読まれるようにしているからである。

現に大山名人の著や、羽生名人の著から、自らの生活に惹きつけて役立たせている者は少なくない。
森内「覆す力」の、「二度目のミスはしない」は全てに役立つ至言だと、林修が絶賛したこともある。

ところが佐藤の本書は、珍しく盤面図などが出ているのである。
そこが他著と比較して珍しい。

無論、読んでいて、棋士が棋譜は頭に入っているはずなのに、何故対局中棋士が棋譜を確認するのかと言えば、実は時間の確認をしているなど、将棋ファンとしては興味深い箇所も多い。
他にも、他の棋士、若手棋士など評価も面白いし、何よりも、佐藤の将棋観がよくわかる。

しかし、前述の羽生らのように、人生の指南書として読むのはふさわしくない。
本書は、むしろ将棋本として読んだ方がいいだろう。



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by kazuo_okawa | 2015-12-21 23:52 | 将棋 | Trackback | Comments(0)