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by kazuo_okawa

クーデターの成功する前に出来る限りのことを~石川健治氏の講演より

日弁連の千葉人権大会2日目、午前中の目玉は石川健治氏の特別講演である。
昨年は元内閣官房副長官補柳澤協二氏の講演であったが毎年この特別講演が良い。

石川氏は、東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授で憲法学者である。
同氏は、安保法制で発言してきた人であり、「96条の会」「立憲デモクラシーの会」の立ち上げに係わった人でもある。

石川氏は学者であり、それまで経験したことのない、日弁連での講演や野音での集会、路上発言をしてきたが結果として敗北した。
これで本当に「戦後」が終わり、ポスト戦後が始まるか、まだまき直せるか。
今はそういう時期という。

以上の前振りをしたあとで、石川氏は安倍首相の、96条改正論議と集団的自衛権認容の閣議決定との「同形性」を指摘する。
安倍政権は非立憲政権であるが、まず石川氏が論理的説明を述べる。

ここのところは、1920年代後半からの議論であり大変難しいところで、石川氏の講演を聞いていてもカールシュミットや憲法制定権力などまるで学生時代を思い出す単語が次々と出てくるのであるが、要するに憲法を自ら作ってくれたところの自らの根拠規定は変えられない、という問題である。
言わば、一番高い山は崩せない。崩せるのは造物主だけであり、造物主以外の者が、造物主が作ってくれた根拠を崩せない。
石川氏はこういうたとえで説明する。

憲法と違って、法典の改正の場合、普通は、「後法優位の原則」に従う。
わざわざ改正のルールを条文化しない。
つまり、法律は改正の根拠を普通は考えない。
憲法がそこにわざわざ改正規定を置く意味は何か。
それは従来とは違う高いレベルを創設しているからである。
それが改正ルールである。
無論、「改正してはならない」や「一定の期間、改正してはならない」というこれらも改正ルール。
これは憲法と法律の間の憲法補充するものと言える。
実は閣議決定は、内部規範であるが、約束法でもある。
従来、何度も「集団的自衛権を行使出来ない」としてきた。
それは、みずから課したルールであり、それを破ることが出来ない。

つまり、96条改正論も集団的自衛権閣議決定も、同一線上のことであり、非立憲性である。つまり専制主義であることを石川氏は断言された。

石川氏は以上のような、規範論理的な説明は、訴える力としてどうか、と考えたという。
自分で自分を縛る問題、「自己拘束」は論理的には難しい。
自己拘束は、すぐに拘束が破られるようだが、実は一番強い。他律と自律があるが、近代人は自律し、自律が一番強いとカントは指摘したという。
しかしこういう話は、方法論的には不十分であり、そこで石川氏は、こういうルールを破る政府は、どんな約束も破ってしまう、と訴えた。
こう訴えたが、どうだったかという。

「クーデター」という言葉を一番最初に使ったのも石川氏という。
あとから考えると論理的な説明の方がよかったが、朝日新聞で「嫌な感じ」と言う論文を書いたのは、じわじわと効くような論文にしようとしたからという。
面白かったのは、香山リカのアドバイスのくだりである。

まあ言わば「安倍依存症」への説得の問題であるという。
依存症患者にどういう治療法があるのか。
香山リカ曰く「脅かすのは無効であることはエビデンスで証明されている。依存症患者も潜在的に持っている動機付けに働きかけることが重要。」
そこで「嫌な感じ」と書いた。内側から引き出す文章とし、理論信仰よりも実感信仰にかけたからという。
この論文は初めて、人の心に届いたという。
喫茶店ルオーのマスターも共感してくれたと聴衆を沸かせる。

改めて考えてみたいと石川氏は訴える。
クーデターにより、昨年7月、戦後は終わっていた。
皮肉なことに、クーデターは成功するために、クーデター後の法的安定が必要である。
法的安定によってクーデターは成功する。
成功するまでのこの期間が、最後の機会である。

今、多くの国民が疑問を持っている。
それを正すのは、参議院選挙か違憲訴訟か、その内に、法的安定性を追求しなければならない時期が来る。
石川氏は、集団的自衛権行使に反対の立場から述べているのではない。
中身がどうであれ、あういう形で変えたことという、集団的自衛権行使賛成派こそ大きなものを失った。

石川氏は静かに訴える。

失ったものは取り返さなければならない。
しかしその為には時間がない。
結論としては、刻一刻、大事な時間が過ぎている。
今、出来るだけのことはやるべきである。
クーデターが成功してしまう前に。


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by kazuo_okawa | 2015-10-04 17:30 | 出来事いろいろ | Trackback | Comments(0)