悩ましい刑事司法関連法案が衆院通過!
2015年 08月 12日
その内容は、検察と警察の取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けや「司法取引」の導入を盛り込んだものであり、8月7日、衆院本会議で与野党の賛成多数で可決された。
法案によると、可視化の対象となるのは、殺人などの裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件。
全事件の約3%にあたると予測されている。
この事件について、被疑者の取調べの全過程が録音・録画される。
司法取引は、被疑者や被告人が共犯者の犯罪を解明するために供述したり証拠を提出すれば、検察官は起訴の見送りや取り消しなどの合意ができる。
対象は経済や薬物事件などに限定し、さらに法案修正により、弁護人が必ず関与することになった。
また、電話やメールを傍受できる通信傍受の対象犯罪は現行法では薬物や銃器など4類型だが、法案では組織性が疑われる詐欺など9類型を追加。
これまでの通信事業者の立ち会いにかわって、捜査に関与しない警察官の立ち会いを義務化した。
そして記録の閲覧や不服申し立てができることを本人に通知する。
この法案をどう評価すべきか。
冤罪を防ぐために可視化が(一部に)導入される一方で司法取引や通信傍受の対象拡大が盛り込まれており、このプラスマイナスをどうみるかである。
熱心に反対する弁護士も少なくない。
しかし、反対するのは簡単であるが、そこから何が生まれるのか。
現状維持で何も生まれない。
結論から言えば、「わずかな前進」を評価すべきであろう。
可視化は、対象が限られているとはいえ、義務化が認められた。
この義務化は、捜査機関に、裁量を許さないという意味で意義がある。
司法取引については弁護人関与の修正がなされた。
通信傍受の拡大も含めて捜査手法の拡大は、弁護実践で被告人の権利を守るべきであろう。
つまり、マイナスは押さえられる。
そうであれば、わずかな前進とはいえ反対する理由はない。
悩ましいがそう考えないと、人権を守る闘いは前進しない。