映画「イミテーション・ゲーム」の秘密と沢木耕太郎の暴露
2015年 04月 06日
その電王戦を報じた新書「ドキュメント・コンピュータ将棋」(松本博文著・角川新書)には、「人工知能の父」と呼ばれるアラン・チューリングがチェスのプログラムを作ったことが紹介されているが、映画「イミテーションゲーム」はその天才数学者の物語である。
チューリングの働きによって、第二次大戦におけるヒトラーのナチスドイツの暗号エニグマを見破り1400万人の生命を救ったという実話を元にしたという。
電王戦のルポに紹介され、謳い文句に「天才数学者」「暗号」「秘密」と並べられれば否が応でも興味を引く。
加えて主役は、あの「シャーロック」!
映画「イミテーションゲーム」は期待に違わず面白かった。
1400万人を救うために、別の命を奪って良いのかというテーマも隠されている。
無論、ヒロインとの「愛の本質」というテーマも興味深い。
何よりも「実話」をエンターテインメントとして、それをうまく「脚色」している。
実際、アカデミー脚色賞を受賞しているという。
(そんな賞があるんですね、知りませんでした)
「発端の謎」「中段のサスペンス」「結末の意外性」はまさにミステリである。
映画冒頭、主役チューリング教授宅に泥棒が入ったにもかかわらず、教授が警官を追い返すシーンから始まる。
担当刑事は、何かおかしい、あの教授には「秘密」がある、と疑う。
映画の副題は「エニグマと天才数学者の秘密」であり、映画の宣伝の謳い文句も「天才数学者の隠された切ない愛」である。
何が隠され、何が「秘密」なのか。
ところが、である。
3月27日付朝日新聞夕刊に「銀の街から」というエッセイで沢木耕太郎氏はこの映画を紹介し、あっさりとこの「秘密」を暴露している。
う~ん、何なんですかね。
これは幾ら何でもいかんでしょう。
映画は、発端のこの「秘密」を軸に、エニグマの暗号を解くために突き進む「サスペンス」をからめ、そして映画後半には物語の一つの核である「秘密」が明かされる。
その「秘密」を勝手に明かしたらあかんでしょう。
ノンフィクション作家にとってはエンターテインメント性などには関心が無いのかも知れないが、そうであれば私には、沢木氏のエッセイは少し残念としか言いようがない。
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