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by kazuo_okawa

映画「イミテーション・ゲーム」の秘密と沢木耕太郎の暴露

将棋コンピュータソフトが棋士と戦う電王戦ファイナルがいよいよ最終局を迎える。
その電王戦を報じた新書「ドキュメント・コンピュータ将棋」(松本博文著・角川新書)には、「人工知能の父」と呼ばれるアラン・チューリングがチェスのプログラムを作ったことが紹介されているが、映画「イミテーションゲーム」はその天才数学者の物語である。

チューリングの働きによって、第二次大戦におけるヒトラーのナチスドイツの暗号エニグマを見破り1400万人の生命を救ったという実話を元にしたという。

電王戦のルポに紹介され、謳い文句に「天才数学者」「暗号」「秘密」と並べられれば否が応でも興味を引く。

加えて主役は、あの「シャーロック」!

映画「イミテーションゲーム」は期待に違わず面白かった。

1400万人を救うために、別の命を奪って良いのかというテーマも隠されている。
無論、ヒロインとの「愛の本質」というテーマも興味深い。

何よりも「実話」をエンターテインメントとして、それをうまく「脚色」している。
実際、アカデミー脚色賞を受賞しているという。
(そんな賞があるんですね、知りませんでした)

「発端の謎」「中段のサスペンス」「結末の意外性」はまさにミステリである。

映画冒頭、主役チューリング教授宅に泥棒が入ったにもかかわらず、教授が警官を追い返すシーンから始まる。
担当刑事は、何かおかしい、あの教授には「秘密」がある、と疑う。

映画の副題は「エニグマと天才数学者の秘密」であり、映画の宣伝の謳い文句も「天才数学者の隠された切ない愛」である。
何が隠され、何が「秘密」なのか。

ところが、である。
3月27日付朝日新聞夕刊に「銀の街から」というエッセイで沢木耕太郎氏はこの映画を紹介し、あっさりとこの「秘密」を暴露している。

う~ん、何なんですかね。
これは幾ら何でもいかんでしょう。

映画は、発端のこの「秘密」を軸に、エニグマの暗号を解くために突き進む「サスペンス」をからめ、そして映画後半には物語の一つの核である「秘密」が明かされる。

その「秘密」を勝手に明かしたらあかんでしょう。
ノンフィクション作家にとってはエンターテインメント性などには関心が無いのかも知れないが、そうであれば私には、沢木氏のエッセイは少し残念としか言いようがない。



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by kazuo_okawa | 2015-04-06 23:18 | ミステリ | Trackback | Comments(0)