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by kazuo_okawa

河口俊彦七段死す!

ニュースによれば、棋士の河口俊彦七段(贈八段・78歳)が、1月30日に亡くなられたという。

将棋棋士としての最後は七段であり、その実力はむしろプロになる前の奨励会の在籍17年という空前絶後の記録を持つことで知られる。
しかしその苦労が、河口師の人間としての幅を広げ、類い希なる観戦作家・文筆家として成功するのであるから人生はつくづく分からない。

晩年は「老師」と呼ばれ将棋界のご意見番として貴重な意見を放った。

実は私自身は、作家・河口老師のファンである。
老師の本は(正確には数えていないが)十数冊購入している。
さすがに老師作といえども「詰将棋本」と「将棋入門本」は買わないがそれ以外はほとんど全て購入している。

私は将棋の実戦派ではなくて、観戦派なのであるが、今にして思えば老師によって、将棋観戦の魅力を知ったといってよい。
老師が当初「将棋マガジン」で連載した「対局日誌」は面白く、それをまとめて発刊された著が良い。(「勝ち将棋鬼のごとし」「勝負の読み方」など多数)
これらの著は、言わば、その年の将棋史の記録的意味合いもある。

未読の方は、そこから「対局日誌傑作選」として昨年夏に発行された「羽生世代の衝撃」(マイナビ)の一冊をを是非ともお読み頂きたい。
無論ここに羽生世代の凄さを実感するが、それは同時に、老師のような熟練の伝達師がいればこそその凄さが伝わると改めて思うのである。

老師の文筆のうまさは、単に棋譜の解説ではなく、エピソードや実戦心理、棋士の表情などを交えた上での観戦記でありそれゆえに下手な小説よりも面白い。
しかもそれは驚くべき慧眼に裏打ちされているから読者を圧倒する。
例えば私が今本棚からたまたま手にした一節は次の通りである。
「現在の名人は中原誠。(略)いずれ谷川が返り咲くであろう。そこで高橋や塚田が挑戦するが、名人戦という舞台では勝てない。そうしている内に羽生が追いついて、あっさり名人になってしまう」(「一局の将棋一回の人生」(新潮社))

要するに棋士の天才ぶりを見抜く力が凄いのである。
別の著、1995年発行の「覇者の一手」(NHK出版)では、当時わずか10歳で奨励会2級の渡邊明(現在、王将・棋王の2冠王)を「10年に一度の天才」と取り上げている。

とはいえその断定的な語り口には同業者(棋士)の反発もあったようである。(後藤元気「将棋エッセイコレクション」ちくま文庫)
しかしファンにとっては河口節の方が面白い。

老師はつい先日まで日経新聞(王座戦主催)の観戦記を書いていた。
老師の実力からすれば本来あれだけのスペースでは足らないくらいであろうがそれでも見事に読ませる。
王座戦の昨年の挑戦者豊島七段に注目していた観戦記もいい。
天才を見抜く河口老師の慧眼通り、豊島もやがてタイトル奪取するに違いない。

こらら観戦記のみならず、河口老師の死を悼み、改めてその過去の名著を再読したい。
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by kazuo_okawa | 2015-02-04 00:15 | 将棋 | Trackback | Comments(0)