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by kazuo_okawa

米澤穂信「満願」を読む

年末恒例、ミステリベストテンの三冠王である。
ベストワンに選ばれるだけあって大した作品である。
短編集であるが、そのどれもが面白い。

【以下、ネタバレしています】

冒頭の作品は「夜景」。
ラストに見事に引っかけられた。
爽快である。

トリック自体は、チェスタトンの「木の葉は森に隠せ」である。
無論、単純に状況を変えれば、ミステリが作れる、というものではない。

米澤は、その「森」をいきなり出すのではなく、その「森」の疑問へ導くために、同僚刑事と兄の存在を巧みに配置して、やがて「森」の謎とその意外な真相へと一気に導く。
この、ストーリテリングはまさしくプロである。

と同時に、トリックは同じでも工夫次第で意外なミステリは尽きない、というミステリの未来に向けての可能性も示唆している。
冒頭作にふさわしい。

そしてラストは表題作。
その、殺人の「動機」を読んだとき、率直に驚いたものである。
よくもまあこんな事を思いついたものである。
「結末の意外性」は大好きなので、これも表題作にふさわしい。
三冠王にふさわしい見事な名作である。
by kazuo_okawa | 2014-12-12 22:05 | ミステリ | Trackback | Comments(0)