豊島、先手中飛車戦法で勝利、王座戦最終局へ
2014年 10月 07日
挑戦者が追い込んだ形であり俄然面白くなった。
この第4局は先手豊島が7六,8四,5六としたあと、先手中飛車を選択し、序盤から優位を築いて押し切った。
飛車を5六から8六と転回していった構想が、素人目ながら、見ていて実に面白い。
序盤5六の場面で、おおっという声が出たそうである。
言わばカド番の豊島の中飛車作戦に、基本は居飛車党である豊島としては思い切った作戦に出たとの見方や、或いは、タイトル奪取のために羽生の意表をついたとの見方もあろう。
しかし私は次のように見ている。
豊島は、単に目先のタイトル奪取だけを考えてはいない。
そもそも天下の羽生に対して、目先の意表をついて勝てると思うのは志が低い。
そうではなく彼の目指すのは長く将棋界をリードする棋士となることである。
そして、羽生は歴史上最強の棋士である(豊島の評)。
ならば、羽生と色々な戦型(それも最先端で)を楽しもう、ということであろう。
この王座戦、奇しくも第1局からこの4局まで戦型が全て異なった。
いずれも大変面白い闘いであった。
私は、今季王座戦では豊島を応援し、タイトル奪取なると思っているのであるが、それにはこれまで同様の心構えを持ち続けることであろう。
思えば昨年の挑戦者中村大地も惜しかった。
敗因は色々とあるのかも知れないが、大きいのはメンタル面であろう。
「勝利の女神は勇者に微笑む」というのは羽生の好きな言葉であり、羽生ほど思い切った指し手をする「勇者」はない。
その羽生を突き崩すのは容易なことではない。
しかし豊島には、羽生を凌駕する勇気ある指し手を放って、そして是非ともタイトルを奪取してほしい。