残業代ゼロ法案!
2014年 05月 28日
「残業代ゼロ制度」は、政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)が導入を目指している制度である。
当初案では、職種の限定はなく、あくまで年収を要件としたものだが、批判を受けて職種限定の方向で修正するようである。
「残業代ゼロ」制度は、かつて第一次安倍政権も「ホワイトカラー・エグゼンプション」として導入を図ったことがある。
しかし、長時間労働や過労死を招くとして世論の強い反発を招き、断念した。
私も当時、読売テレビ系の「ミヤネ屋」という番組に呼ばれ、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の問題点を解説したことがある。
「ミヤネ屋」という人気番組だったということもあろう。
テレビを見た多くの人から問題点がよく分かったとの感想を貰ったものである。
今回の「残業代ゼロ」制度は、批判を受けて断念した「ホワイトカラー・エグゼンプション」とほとんど同じである。
従って長時間労働や過労死を招くというかつての批判は今回もそのままあてはまる。
7年前は、いかにももっともなカタカナ用語であったが、今回は「世界レベルの高度専門職」である。
決して美しい言葉に騙されてはならない。
また、職種や年収の制限があるから、自分には関係がないと思ってもいけない。
仮に制度が法律通り運用されたとしても、労働者の給与のベースアップは、どこかで
「給与据え置き」か「増額だが残業無しで長時間労働」のどちらを選ぶかという苦しい選択を迫られる。
肝心なのは、そもそも現在でも、残業は「野放し」といってよい現実にある。
法的規制は決して行き渡っていない。
そんなときにこんな法律が出来ればどうなるか。
ますます残業が強化・野放しにされるに違いない。
しかもいったん制度が導入されたら、「職種の規制」や「年収制限」も次々と緩和されるであろう。
そのことは、かつての「派遣法」導入の歴史を見ればよい。
派遣法の制定時、「派遣」はあくまで働き方の例外であるとして、職種も限定して導入された。
決して正社員の職は脅かさない。
常用代替にしない、と政府は約束した。
しかし、現実の歴史はどうであったか。
実際は、派遣の出来る職種は次々と増えていき、やがて、例外と原則が逆転して派遣は原則自由となった。
派遣法は、まさしく非正規労働の増加と、格差社会を生む役割を果たした。
今回「残業代ゼロ」制度を導入すれば、この派遣の歴史と、やがて同じ道をたどるであろう。
今、反対の声を上げなければならない。
それこそ「歴史から学ぶ」というものである。